八軒家浜に設置された吸い殻入れが吉村知事の指示により撤去。手続きはなおざり、甘い認識。

八軒家浜(はちけんやはま)は大阪市中央区を流れる大川(おおかわ)左岸の河川敷で、遊歩道が整備され、駅ビルに隣接、船着場もあり、多くの人で賑う場所だ。ここの美化活動をボランティアとして担うのがチームはちけんやであるが、吸い殻投棄の多さに業を煮やし、吸い殻入れを2018年3月より設置した。当然予想されることとして喫煙者が集まり、周囲へ受動喫煙を生じさせる結果となった。このことを指摘するツイートが吉村府知事や松井市長の目に留まり、2019年6月5日にトップダウンで撤去されることとなった。

吸い殻入れが設置された経緯を情報公開請求により調べると、チームはちけんやは河川管理者である大阪府西大阪治水事務所の承認なく設置し、8ヶ月後に承認を得ていた。また設置期間を過ぎてもなお設置を継続し、再度事後承認を得ていた。手続きがなおざりにされていたという他ない。

西大阪治水事務所は吸い殻入れは美化目的であり、喫煙場所ではない、との認識を示すが、喫煙者が喫煙目的で集中するのは誰でも予想が付くことだ。健康増進法が改正され、屋外であっても受動喫煙を生じさせない配慮義務が課せられたのだから、認識を新たにして欲しい。

経緯

2010年

  • 2月16日 チームはちけんやが八軒家浜にて美化活動を開始

2018年

  • 3月 チームはちけんやが吸い殻入れを設置
  • 11月19日 西大阪治水事務所が設置願いを受理(期間: 2018年4月~2019年3月)

2019年

  • 5月9日 府民のツイート「川沿いの遊歩道に灰皿が置かれ喫煙所」
  • 5月10日 松井市長がリプライ「具体的に場所を教えて下さい。対処します。」
  • 5月13日 吉村知事のツイート「府として吸い殻入れを撤去する方向で動きます。」
  • 5月28日 西大阪治水事務所が設置願いを再度受理(期間: 2019年4月~2020年3月)
  • 5月29日 撤去を関係者が了解
  • 5月31日 吸い殻入れに撤去予告の貼紙
  • 6月5日 西大阪治水事務所が撤去

八軒家浜

一級河川大川の左岸河川敷、天満橋(てんまばし)のすぐ下流側に位置する。さらに下流側の天神橋まで遊歩道が整備され、駅ビルに隣接し、船着場もあり多くの人で賑う場所だ:
八軒家浜船着場(はちけんやはま) - 船着場情報|水都大阪
八軒家船着場 - Wikipedia

吸い殻投棄

京阪電車天満橋駅への出入口付近に吸い殻が散乱している様子(2016年8月):

チームはちけんや

チームはちけんやは、周辺の北浜東振興町会、大阪水上安全協会、大阪府都市整備推進センター、京阪電気鉄道大阪水上バス尼崎信用金庫等により結成された八軒家浜の清掃美化や緑化に取り組む団体で、大阪府西大阪治水事務所とアドプト・リバー協定を締結し、ボランティア活動をしている。

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アドプト・リバー八軒家浜の看板(筆者撮影)

参考:
都市整備部 河川室河川環境課 管理グループ 作成:
大阪府/大阪アドプト・リバー・プログラム
都市整備部 西大阪治水事務所 河川管理グループ 作成:
大阪府/ボランティア支援
公益財団法人 大阪府都市整備推進センター 作成:
公益財団法人 大阪府都市整備推進センター | 事業の概要

八軒家浜での美化活動及び河川愛護活動について(おねがい)

チームはちけんやが大阪府西大阪治水事務所に吸い殻入れの設置を願い出た文書が次の2通:

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八軒家浜での美化活動及び河川愛護活動について(おねがい)
目的は美化(吸い殻投棄の防止)であり、受動喫煙についての考慮は全くなされていない。その上問題なのは、共に事後承認を求める点だ。

左の2018年(平成30年)11月9日付の文書には、『平成30年3月より「吸い殻入れ」を設置させていただいております』としており、事後承認を求める内容となっている。設置期間は「平成30年4月1日~平成31年3月31日」とある。

しかし、この期間を過ぎても吸い殻入れは設置されたままであった。右の2019年5月24日付文書は、この設置期間超過に気付いて再度提出された文書で、そのためやはり事後承認を求める内容である。

吸い殻入れの設置に必要な手続きが疎かにされていたといえよう。

府民のツイート・松井市長のリプライ

2019年5月9日に八軒家浜を訪れた府民が、吸い殻入れの設置に気付きツイートした。翌10日、松井市長が「対処します」とリプライした:

一級河川大川とその河川敷は大阪府の管理であり、大阪市の松井市長が直接解決出来る問題ではない。

吉村知事のツイート

5月13日、松井市長から要請を受けた吉村知事が府として撤去に向け動く旨ツイートした:


「八軒家浜(一級河川大川河川敷)に設置された吸い殻入れ」について(ご報告)

吉村知事がツイートしたこの日、大阪府の河川室 河川環境課では、吸い殻入れについて

  • 設置経緯等
  • 設置効果
  • 設置による課題

を整理する文書が作成されていた:

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「八軒家浜(一級河川大川河川敷)に設置された吸い殻入れ」について(ご報告)
設置による課題を

煙草の吸殻のポイ捨ては減少したものの、設置場所を「喫煙場所」と誤認する府民も多く、喫煙を助長するとともに、受動喫煙が発生しているとの指摘あり。

とするが、こんなことは設置当初から予想出来たはずだ。

健康増進法25条の3

2019年1月24日より、健康増進法の改正法が一部施行され、屋外であっても受動喫煙を生じさせない配慮義務が課せられることとなった:

(喫煙をする際の配慮義務等)
第二十五条の三 何人も、特定施設の第二十五条の五第一項に規定する喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない。
2 多数の者が利用する施設の管理権原者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない。

そのため、このように人で賑う場所に吸い殻入れを設置することは配慮に欠けると言える。この点について文書で言及があってもよかったように思う。

大阪府子どもの受動喫煙防止条例

2018年12月には大阪府子どもの受動喫煙防止条例が可決され即日施行された。

府民等の責務)
第三条 府民等は、子どもの周囲において受動喫煙をさせることのないよう努めなければならない。

とあり、府民等に子どもへ受動喫煙を生じさせない努力義務を課す。八軒家浜は家族連れ・子どもも訪れる場所である。府が受動喫煙を推進しては話にならない。

啓発チラシ:

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大阪府子どもの受動喫煙防止条例(啓発チラシ)

参考:
大阪府/大阪府子どもの受動喫煙防止条例

八軒家浜(一級河川大川河川敷)に設置された吸い殻入れを撤去(ご報告)

関係者の了解を得、撤去予告通知を経て、6月5日に吸い殻入れが撤去された。その際作成された文書がこちら:

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八軒家浜(一級河川大川河川敷)に設置された吸い殻入れを撤去(ご報告)

撤去の様子を写真付きで紹介し、また

撤去と同時に啓発看板設置(13 箇所)

とある様に「受動喫煙防止の観点から全面禁煙を推奨します」との啓発看板が設置された:

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啓発看板(筆者撮影)

「全面禁煙を推奨」と、歯切れの悪さを感じる。管理者として「禁煙」と言い切って欲しいものだ。

西大阪治水事務所の認識

西大阪治水事務所に問い合わせると「これら吸い殻入れは喫煙場所でない(なかった)」との認識を崩さなかった。しかし常識的に通用するはずがない。だったら歩きタバコを容認し、その終着点として吸い殻入れを設置していたのか。

なお、同事務所の所管内にて、八軒家浜以外に、同事務所が設置承認した吸い殻入れがないことを確認している。

この件は、偶然首長の目に留まり、解決に至ったが、全庁的に受動喫煙防止対策の重要性を理解・共有して欲しいものだ。