大阪府が職員の勤務時間中喫煙に対し厳罰化方針

2019年6月14日、大阪府の吉村知事が『勤務時間中における喫煙禁止の徹底について(通達)』を職員に通知した。勤務時間中の喫煙は職務専念に違反する行為であり、懲戒処分の対象となりうるとするものだ。度重なる職員の違反を受けての措置で、前任の松井知事も同様の文書を出していたが、再度の通知となる。

これまでの違反行為は懲戒処分ではなく、原則非公表の「服務上の措置」として処分されて来た。しかしこの度の通知では、懲戒処分(戒告または減給)となりうる非違行為と明確に示されている。

これら通達のきっかけとなった違反行為への処分は既に新聞等で報道されているが、他にも同様の事案がないかと調べた所、処分に至らなかったものを含め4件あった。

なお、府職労は松井知事の通達に対して撤回を求める申し入れをした。職員の管理強化に繋がる恐れがあるとの理由からだ。今回の通達に対しても撤回を求めるのだろうか。

経緯

2008年

  • 5月 府庁舎敷地内の終日禁煙を実施

2015年

  • 11月10日 処分に至らない事案(平成27年度 人事第2272号)

2016年

  • 3月25日 処分に至らない事案(平成27年度 人事第3043号)

2017年

  • 3月28日 厳重注意(平成28年度 人事第2679号)
  • 9月13日 厳重注意(平成29年度 人事第1736号)

2018年

  • 4月16日 訓告(平成30年度 人事第1064号)
  • 7月5日 松井知事による通達(平成30年度 人事第1473号)
  • 10月29日 府職労が通達の撤回を求める申し入れ

2019年

  • 1月21日 訓戒、訓告、厳重注意2、所属長注意2(平成30年度 人事第2408号)
  • 6月14日 吉村知事による通達(平成31年度 人事第1431号)

勤務時間中における喫煙禁止の徹底について(通達)

平成30年度 人事第1473号(平成30年7月5日付)

松井知事の名により出された通達がこちら。職員あてと管理監督者向けの2通ある:

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勤務時間中における喫煙禁止の徹底について(通達)

喫煙により職務専念義務に違反した職員に対する懲戒処分の取扱いをこれまで以上に厳格化する

と警告した上で、記書きにて

1 勤務時間中に喫煙しないこと
2 勤務時間の内外にかかわらず、庁舎敷地内では喫煙しないこと

の2点を職員に通達し、また管理監督者には部下職員への指導・監督を求める。

平成31年度 人事第1431号(令和元年6月14日付)

吉村知事の名により出された通達がこちら:

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勤務時間中における喫煙禁止の徹底について(通達)
前出の松井知事による通達を引用し、再度、勤務時間中及び庁舎敷地内での禁煙を通達する。

また懲戒処分の根拠を明確に示す:

喫煙による職務専念義務違反は、職員の懲戒に関する条例(昭和26年大阪府条例第42号)別表7に該当する非違行為として、懲戒処分の対象となり得る

参考:
職員の懲戒に関する条例

職員の懲戒処分等について

2015年9月18日以降の勤務時間中喫煙に対する処分事案を調べた。処分に至った事案は、懲戒処分でなく「服務上の措置」として処分されてきた。軽いものから厳重注意、訓告、訓戒の順である。報道提供はされない。

平成27年度 人事第2272号

2015年11月10日に起案されるも処分に至らず、処分案等は開示されなかった。

平成27年度 人事第3043号

2016年3月25日に起案されるも処分に至らず、処分案等は開示されなかった。

平成28年度 人事第2679号

2017年3月28日付で厳重注意が下された事案:

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平成28年度 人事第2679号の処分案、措置文案、処分検討資料
勤務時間中の喫煙を同僚職員が発見し、処分に至った。職務専念義務違反の時間は計40分。

平成29年度 人事第1736号

2017年9月13日付で厳重注意が下された事案:

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平成29年度 人事第1736号の処分案、措置文案、処分検討資料
研修の休憩時間中に喫煙し、それが職務専念義務違反に当たるとされ処分に至った。また出張旅費の過大請求もあった。職務専念義務違反の時間は計59分。

喫煙の発覚は、

「遅刻・早退・一時退室者名簿」に、その理由を「きつえん」と記載したこと

による。堂々と退室理由を喫煙と書けるということは普段は休憩がてらに喫煙出来ているということなのだろうか。

企画厚生課は、研修時間中の休憩時間について

研修時間中の休憩時間はトイレ等のために設定されているものであり、通常の勤務時間中である以上職務専念義務違反があり、喫煙等による職務離脱は認められない

としている。

平成30年度 人事第1064号

2018年4月16日付で訓告が下された事案:

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平成30年度 人事第1064号の処分案、措置文案、処分検討資料
府庁近くの民間ビルの喫煙室での勤務時間中喫煙が通報され処分に至った。職務離脱回数は443回に及び、職務離脱時間は105時間52分であった。

報道もされ、松井知事による通達のきっかけともなった:
www.sankei.com

平成30年度 人事第2408号

2019年1月21日付で財務部所属の計8名に訓戒、訓告、厳重注意2件、所属長注意4件が下された事案。

処分案:

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平成30年度 人事第2408号の処分案
措置文案:
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平成30年度 人事第2408号の措置文案
処分検討資料及び別紙:
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平成30年度 人事第2408号の処分検討資料及び別紙

通報をきっかけに処分に至った。最も重い訓戒が下された職員は計2318回、のべ257時間50分もの勤務時間中喫煙に及んでいた。それだけでなく上司から注意を受けてもなお、違反喫煙を継続していた。

次に重い訓告処分を受けた職員は、計529回のべ52時間42分であり、総時間だけ見れば厳重注意を受けた職員の一人よりも短かったが、事情聴取の際に虚偽の報告を行ったことが、より処分を重くしたと考えられる。

所属長注意4件のうち、うち2件は管理監督責任を問われたもの。勤務時間中喫煙をした6名のうち5名は再任用であり、年長に当たる。注意するのが憚られたため、このような長期に亘る違反を許すこととなったのだろうか。

違反が終了したのは2018年7月と、ちょうど松井知事の通達が出された時期に一致する。通達をきっかけに通報があり発覚したのだろう。報道もされ、吉村知事もこれを期に再度の通達を出した:
news.livedoor.com

松井知事の「公用車喫煙問題」に厳しく抗議するとともに、あらためて「喫煙禁止の徹底(通達)」の撤回を求める申し入れ

大阪府職員労働組合が2018年10月29日に府に申し入れた文書:

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松井知事の「公用車喫煙問題」に厳しく抗議するとともに、あらためて「喫煙禁止の徹底(通達)」の撤回を求める申し入れ
内容はタイトルの通りで、松井知事の「公用車喫煙問題」に厳しく抗議し、また「喫煙禁止の徹底(通達)」の撤回を求める。

「喫煙禁止の徹底(通達)」の撤回は管理強化を恐れ求めるものだが、周囲への受動喫煙防止を考えれば勤務時間中禁止は当然の措置だ。喫煙後はしばらく呼気に有害物質が含まれ周囲はそれに曝露する。「分煙の徹底」などそもそも不可能である。

松井知事の「公用車喫煙問題」とは、松井知事が議会の休憩中に庁舎の周囲を公用車で巡回しながら車内で喫煙した問題。府職労は一般職員との不平等を糾弾する。運転手の受動喫煙には触れられていない。

どうもポイントがズレているように思う。

参考:
府職の友第2084号 予算・職員の削減、職員犠牲では住民の安全・安心は守れない – 大阪府関係職員労働組合Blog
www.asahi.com