東大阪市花園ラグビー場の喫煙所がFCTC第5条3項に違反

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タイのタバコパッケージ

ラグビーワールドカップ2019日本大会は2020東京オリンピックパラリンピックと異なり会場が敷地内禁煙ではない。各会場に喫煙所が設置されている。

そればかりか、あろうことに東大阪市花園ラグビー場JTから喫煙所の寄贈を受けた。タバコ規制枠組条約(FCTC)第5条3項の実施のためのガイドライン「たばこ規制に関する公衆衛生政策をたばこ産業の商業上及び他の既存の利益から保護すること」に違反する所業だ。

喫煙所は規模が大きい割には動線に近く、また煙を遮る措置が施されていない。受動喫煙が生じることだろう。なお喫煙所はラグビーのフィールドを模した悪趣味なものだ。

参考:

経緯

2018年

  • 8月27日 JT宛に見積書
  • 9月12日 JT大阪支社より東大阪市長へ寄付申込書
  • 9月14日 寄付収受について(通知) 東大阪ワ推第974号
  • 9月20日 覚書締結

2019年

喫煙所

メインエントランス(写真左方向)の向かって右手に位置する:

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花園ラグビー場の喫煙所(東より撮影)
灰皿が多数並んでいることから一度に多人数の喫煙を見込んでいることが分かる。通路にタバコ煙が到達しうる距離だ。


南側から見た様子:

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花園ラグビー場の喫煙所(南より撮影)
右手のコーンには「駐輪場」と札が掲げられていたように思う。とするとその利用者にも受動喫煙が生じるということだろう。


意匠はラグビー場を模したもので、公式ツイッターアカウントでも紹介されていた(削除済):

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ラグビーワールドカップ公式ツイッター

煙草を吸わない人でも立ち寄ってみたくなりますね!

とあることからも、受動喫煙防止に意識が及んでいないことが伺える。

寄付収受について(通知)

2018年9月14日付け東大阪市長よりJT大阪支社長への文書がこちら:

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寄付収受について(通知)
その2日前、2018年9月12日にJT大阪支社より寄付申込書が東大阪市長宛に送られていた。

覚書

9月20日に締結された覚書がこちら:

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覚書
第5条に供用期間が(短くとも)7年間と定められている。JTにしてみれば無料で土地の提供を受けられ7年間もの長期に亘り喫煙所を設置出来るのだから、喫煙設備の投資以上の見返りがあるのだろう。

第7条に市の契約違反時にJTが取り得る措置が定められている。JT地方自治体との覚書は様々見て来たが、この条項はここでしか見たことがない。恐らくそれなりの負担があったためそう簡単に撤去されないよう予防線を張っているのだろう。

タバコ規制枠組条約(FCTC)第5条3項の実施のためのガイドライン

タバコ規制枠組条約(FCTC)はその第5条3項にて締約国に対し、

たばこ規制に関する公衆衛生政策の策定と実施にあたり、国内法に従い、たばこ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護するために行動する

ことを求めている。なぜなら『たばこ産業と公衆衛生政策の間には、根本的かつ相容れない利害の対立が存在する(原則1)』からだ。

第5条3項の実施のためのガイドラインによると、市町村にも適用される。つまり東大阪市にも適用される。とすると花園ラグビー場のような多くの人が集まる場所での受動喫煙防止対策も公衆衛生政策の一環としてタバコ産業から保護されるべきだろう。しかしながら市がJTからの寄贈を受け入れたことが、ガイドラインの勧告6.2に違反する。

JTCSR(社会貢献活動)と称してスタンド灰皿の寄贈をしており、花園ラグビー場への喫煙所寄贈もその延長線上にあるものと考えられる。

一方、ガイドラインの勧告6.2は、

6.2 締約国はたばこ産業の社会的責任と称される活動を是認、支援、提携又は参加すべきではない。

と示している。(「社会的責任と称される活動」とはCSR活動のこと。)

つまり、東大阪市JTからの寄贈を受け入れたのは、勧告6.2に反し、JTCSR活動と提携したと理解することが出来る。

結局、受動喫煙が生じうる場所に喫煙所が7年間も継続設置されるのだから、JTの利益が優先され、公衆衛生政策は迫害されたと評価すべきだろう。

参考: