「秋田から喫煙者を無くす」宣言をした佐竹知事と県庁の敷地内禁煙に抵抗する議員

受動喫煙防止にはトップの理解と決断が重要なようだ。癌の死亡率が21年間全国ワーストである秋田県(「がん死亡率」全国ワースト秋田県 塩分とり過ぎと喫煙習慣の改善急務 : J-CASTニュース)は、健康寿命日本一を目指す取り組み(秋田健 - ここから始める健康寿命日本一!)を推進している。禁煙と受動喫煙防止(さあ、はじめよう!(禁煙)|秋田健 - ここから始める健康寿命日本一!)も含まれ、10月1日から実施された県庁の敷地内全面禁煙もその一環だ。議会で抵抗する議員もいるが、答弁からは知事や幹部が受動喫煙防止対策についてよく理解し、信念を持って取り組んでいることが見えてくる。喫煙室の設置では、煙が漏れ出すのを完全に防ぐのは難しいこと、子ども連れや癌・喘息患者をタバコ煙から保護する必要があること、民間による自主的な取り組みではなく行政による規制が不可欠であること、これらのことを明快に回答している。そんな中、佐竹知事からは「秋田から喫煙者を無くす」という目標が掲げられた。公衆衛生政策とはこうあるべきだ。知事のリーダーシップに期待したい。

県民の声

県民から知事への手紙を通じて支持する意見が投稿され、県の回答が公表されている:
www.pref.akita.jp
職場の三次喫煙(後述)で苦しむ受動喫煙(受動喫煙症の診断可能な医療機関|日本禁煙学会)の患者からだ。意見を引用する:

たばこによる健康被害防止について

 平成30年6月議会予算特別委員会で「最終目標は秋田から喫煙者をなくすこと」と発言されたことについて、全面的に支持させていただきます。
 私は、喫煙後の呼気、衣服や毛髪に付着したタバコ煙成分の揮発による三次喫煙曝露で体調を崩す受動喫煙患者です。現在、職場の上司が喫煙者なので喫煙所帰りの呼気の三次喫煙、また彼らのニコチン依存からくる情緒不安定によるコミュニケーション不全に悩まされています。
 秋田県だけでも、喫煙者が一人残らず卒煙し、また非喫煙者が喫煙を始めないことによって喫煙者ゼロとすることは、私のような職場での被害者をゼロにし、健全な職場をつくり、健全な雇用を確保し、喫煙関連疾患罹患による経済損失のない恒久的な税収確保につながります。
 どうか本当に喫煙者がゼロになるその日まで、御尽力願います。

喫煙者が情緒不安定なのは、ニコチン依存症(なぜ、タバコがやめられない? - すぐ禁煙.jp(ファイザー))の離脱症状によるものと思われる。喫煙すると脳が変質し、ニコチンを外部から摂取しなければ脳内でドーパミンを生成することが出来なくなる。喫煙後30分程経過するとニコチン血中濃度が低下し、イライラが募り落ち着きがなくなる。これが離脱症状である。卒煙こそが治療法である。禁煙し3日程すれば脳が再構成され、離脱症状が治まる。

知事にはこちらから意見できる:
www.pref.akita.lg.jp

報道

報道によると、

秋田県が10月1日から県庁舎敷地内を全面禁煙にする。本庁舎、第二庁舎、議会棟、各地方にある地域振興局庁舎などが対象で、灰皿を撤去し喫煙所を閉鎖する。職員は休憩時間を除き勤務時間内は敷地外でも禁煙とする。

とのことである。『愛煙家からは「我慢すると逆にストレス」』とも記事にはあるが、前述したニコチン依存症の離脱症状を吐露したものと思われる。卒煙すれば解消されるストレスであり、タバコこそがストレスの元であるが、これを自覚出来る喫煙者は少ない。
www.nikkei.commainichi.jp
また、同時に秋田県警も、

県警本部や警察署など関連施設の敷地内を10月から全面禁煙とすることを決めた。

とある。県に歩調を合わせた形だ。
www.sakigake.jpwww.asahi.com

県庁の敷地内禁煙は、健康寿命日本一を目指す取り組みに禁煙・受動喫煙防止対策があり、行政として民間に模範を示す意味もあり、実施することであり、もともとは昨年の12月議会における佐竹知事の答弁の中で検討すると、触れられていたことだ(後述)。

そして今年の2月の時点で決定していたようだ。2月20日の本会議(代表質問)において、佐藤雄孝議員への答弁で明らかになった。佐藤議員は喫煙者であり、反対の立場から質問した。
www.sakigake.jpmainichi.jp

実施に至るまでの間、県議会で抵抗した議員がいた。小松議員だ。7月11日に開催された第1回定例会(6月議会)の予算特別委員会 総括審査において、小松隆明議員(美の国あきたネット [秋田県議会])が敷地内全面禁煙の再考を求める質問を行った。小松議員は50年来の現役喫煙者である。対して、佐竹敬久知事は46歳まで喫煙していたが、一念発起し禁煙し、以来24,5年一本たりとも吸っていない元喫煙者である。質問と答弁を見れば、喫煙に対する認識が大きく異なることが分かる。喫煙議員は受動喫煙の影響を過少評価し、最近理解が進む三次喫煙という残留タバコ成分への曝露という受動喫煙の新たな概念を否定する。一方、佐竹知事は卒煙後10年経った頃からタバコの臭いも気になりだしたようで、癌や喘息患者などへの健康被害を防止するには敷地内完全禁煙しかないと答える。また医療費の問題があることなどタバコの消費が健康面だけでなく、経済面でも悪影響を及ぼすことを正しく理解していることが分かる。

質問と答弁

質問と答弁を書き起こし、詳しく見る。秋田県議会の録画はここから視聴出来る: http://smart.discussvision.net/smart/tenant/pref_akita/WebView/list.html
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途中出席者から笑いの起こる場面が何度もある。「秋田から喫煙者をなくす」と佐竹知事が口にした時にも笑いが起きた。議場は緊張感を欠くようだ。県議会は受動喫煙防止や禁煙推進を重要視していないように見受けられる。

質問(2:28) 小松 委員

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えー、さて。えー、県庁内における、うー、敷地内禁煙についてでございますけれども、えー、実はあの、この、資料をもらいましたら、秋田県では秋田市の22億円をはじめトータルで84億円の、まあ、あータバコ税をもらっております。まああの、これは県にとっては貴重な単独財源でありますので、まあ知事も、おー大変まあ、あー、ありがたいことだなぁと思っていると思いますけれど、このタバコ税の、おー、使途については、知事は特別どのような考えを持っているか、あー、まず最初にお聞きしたいと存じます。よろしくお願い致します。

喫煙擁護議員がタバコ税で話を切り出すのは常套手段である。喫煙者は財政に貢献している、喫煙者が納めた税であるのだから、喫煙所の整備に費やすべきだ、という主張が暗に込められる。しかし目的税ではないため、使途は自由に決められる。またタバコ関連疾患による超過医療費の問題があるため(後述)、財政貢献や喫煙者に還元すべきという議論は成り立たない。
このような質問が公然となされるのはタバコ税の根拠となるタバコ事業法(e-Gov法令検索)の存在に理由がある。第一条には目的として、「この法律は、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、製造たばこの原料用としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」とある。このようにタバコ製造に対し肯定的な法律であり、日本における禁煙推進や受動喫煙防止の足枷となっている。今やタバコの消費は、健康・社会・環境・経済に破壊的影響を与えることが分かっているのであるから、このような時代遅れの法律は早急に「タバコ規制法」などへと改廃されるべきである。

答弁(3:16) 佐竹 知事

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えーまあタバコ税そのものは、あー、まああの最近の動向を見ますと、まあ、えー、二十、二十、一昨年から、一昨年と昨年度から見ますと、やっぱり5%くらい落ちてます。まあここずうっと漸減傾向と、ただ、まああの税があのー、おー、くい(※聞きとれず)が上がりますので、その時はまた、元に戻るという、まあ後、諸外国に比べますと、まあ、発展途上国はまああー意外とあの、タバコ税の税率が安いんですけども、まあヨーロッパ、欧米は、まあ日本以上に高いという、まあ状況でございます。で、えー、この、えー使途がまあ、29年度決算では、えー県が約11億円、市町村が約68億円、計79億円程度、で、これあの、全部一般財源、としての扱いになります。まあ、そういうことからしますと、まあ、えー何に使ってもいい訳ですから、非常に、えー、貴重な税源ではございます。

タバコ税収入が減少傾向にあるとの答弁。10月から増税されたため、持ち直す可能性はある。

質問(4:22) 小松 委員

えー、そこでですけれども、まあ、あのー知事が、あー、敷地内全面禁煙を打ち出した気持ちが分からない訳でもございませんが、一方でやっぱり、あのー、えー、私もその一人ですけれども、まあ、愛煙家と称する人達も2割や3割いるわけでありまして、やはりあのー、敷地内を全面禁煙にするということはですね、やっぱりそういうまあ、あー、愛煙家に対しても、ちょっとキツ過ぎるのではないかと思っていております。
勿論、えー、健康日本一をまあ目指している関係からその一環としての、この、おー、禁煙策だとは思っておりますけれど、まあこのことに関しては、非常にまあ色んな会合で、まあ、取り上げられ、とりわけ愛煙家の中では、ちょっとやり過ぎじゃないの、と、こういう意見も多い訳でありまして、えーそこの所を、おー、担当部長さんなり、えー、される方は、あー、どうやって、県民に、全員に、多くの人に、えー、納得していただけるか、その考えについてお伺いしたいと存じます。

秋田県健康寿命日本一を目指しており、全国的にも高い喫煙率の低減や受動喫煙防止もその取り組みに含まれる:
kenkou-nihon1.jp

答弁(5:40) 名越 総務部長

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えーあの、今議員のご指摘の通りですね、タバコを吸われる方にとって、まあ非常にご負担かけていることについては、あの理解はしているんですけれども、やはり平成18年の4月から、えーと県庁はあの建物内禁煙を実施して来ているんですけれども、やはりあの完全な形で受動喫煙まあ防ぐことが、中々難しいということで、まあお子さん連れの方だとか、あとまあ癌だとか喘息の病気を抱える方に、まあやはり、色々な意味でのえーご負担を強いているという所も事実でございます。
まあそういった意味で、あのー、またあの、秋田県はですね、えー必ずしも健康寿命が長くないということで、日本一を目指すという風に、いー目標を掲げておりますので、まあ色々な、あー、ご不満だとか、あるかとは思うんですけれども、まあご理解賜わりたいなということで、えー、敷地内禁煙を進めて行きたいという風に考えております。

県庁の屋外にある喫煙所がどのようなものか知らないが、タバコの煙は非常に広範囲に拡散する。例えば壁などで囲われていない剥き出しの喫煙所であれば、風下25メートル先にまでタバコ煙は到達することが知られている。受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究(全て表示|厚生労働科学研究成果データベース MHLW GRANTS SYSTEM)の分担研究報告書「受動喫煙防止の法規制の強化に関する研究」より引用する:f:id:muen_desire:20181001024736p:plain
喘息患者がこれに曝露すると発作が起きる可能性がある。

質問(6:35) 小松 委員

まああのー、おー、それも分からない訳ではございませんけれども、まあ最初あのー、おー、県庁内の、おー、敷地内全面禁煙の話を聞いた時は、私は、ちょっと上意下達が、あー、やり過ぎでないかという印象を持ちました。
で、あのー、職員のアンケート、これに関してもですね、やはりあのー、知事の意向が分かった上での、アンケートでしたので、まあ職員の立場からすれば、例え、喫煙者であっても、やっぱり、えー、知事の意向を忖度する、という面があったのではないかと思っております。
また、あー、健康日本一は禁煙もその一つでしょうけど、やはりあのー、長野県のように、えー、かなり多くの健康、まあ正式な職名は分かりませんが、健康増進員とか協力員とか、あー、そういうまあ多くの人が参加して、そして、あのー、全県民的に、えー理解をし、行動しなければ、あー、10年後の健康寿命日本一など覚束ないと、このように考えますけれども、その点はいかがでしょうか?福祉部長さん誰かな?これ。

県民理解を盾に取り、反対するようであるが、まず自分が理解に努めてはどうか。
長野県の取り組みとは、保健補導員のことのようだ。須坂市(須坂市ホームページ - 長野県須坂市)が昭和33年発祥の地を主張しているが、佐久市(佐久市公式ホームページ)によると昭和20年からあったようだ。相当昔からあり、県下の市町村およそ全てに組織されているようだ。長野県は健康寿命が男女とも1位(平成22年)であった。現在はだいぶ順位を下げている。
保健補導員発祥の地 須坂市 - 長野県須坂市
保健補導員とは? | 佐久市ホームページ
長野県の健康長寿について: https://www.pref.nagano.lg.jp/kenko-choju/kensei/soshiki/soshiki/kencho/choju/documents/naganokenkochoju261117.pdf

答弁(7:55) 保坂 健康福祉部長

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やっぱり、このー、タバコ対策、受動喫煙対策については、県民の理解を十分に得て、進めなければいけないものだと、思っております。えー、ただ一方でですね、あのー色々こう昨年来、あのー、施設訪問、事業所訪問をしたり、アンケート調査をしたりしますと、どうしてもこう、利用者、従業員の雇用おう(※聞きとれず)方々の理解を得ることは十分必要だけれども、うー、ただ、行政側の強い指導、規制を、が必要であると、いう意見もございます。
また、あのー、県に対してですね、足元、自分、あのそういう風に、規制をする、自分達では、中々規制出来ないので行政に期待と合わせてですね、県自ら、そういう喫煙対策、受動喫煙対策について取り組んで欲しい、という話もございます。
まあこうしたことから、あのー、癌の死亡率、県では21年間、全国ワーストになっている現状から、少し強い、えー取り組みをしていかなければならないものだと思ってます。
ただ、繰り返しなりますが、十分そういうことを進める上では、県民理解というものを十分得ていかなければ、実効性のある規制ってものは出来ないものだと、そういう風に理解しております。

県自らが、率先して、喫煙対策、受動喫煙対策に取り組み模範を示し、また民間に対して規制をかけることが必要との答弁。なお、受動喫煙防止対策については、タバコ規制枠組条約第8条のガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/dl/fctc8_guideline.pdf)は罰則付の規制の法制化を加盟国に求めている。民間の自主的な努力では限界があるからだ。答弁はこのことを裏付けるかのような内容である。条例による規制の可能性を佐竹知事は、平成29年12月5日の第2回定例会において原幸子議員(美の国あきたネット [秋田県議会])の一般質問に対する答弁で触れていた。議事録に『たばこによる健康被害防止対策については、有識者や各団体の代表からなる検討委員会を開催するとともに、県民の意見を直接聞く機会を設けるなど、県民の合意形成を図りながら、条例の制定も含めて対策の強化を図ってまいります。』とある:
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この答弁において、『県庁舎の敷地内禁煙に向けた検討を進める』との発言もあった。

以下、小松委員と佐竹知事とのやり取りが続く。小松委員は何が何でも県庁敷地内で喫煙がしたいようだ。非喫煙者への受動喫煙被害について、関心は薄い。

質問(9:26) 小松 委員

まあ、いずれあのー、私のこう、知り得ている範囲では、これは同僚の杉本議員が言ってましたけども(※議場から笑い)、あのー(笑)、えー、タバコの臭いってのは、癌とは関係ないという話を聞いてまして、これはあのー、えー、杉本先生が公益財団法人の(※議場より笑い)、望月友美子先生の話を聞いて、まあ、改めてその思いを強くしたようですが、まあ分煙という方式といいますか、やり方は、知事は考えられないものでしょうかねえ?

杉本議員とは、杉本俊比古議員美の国あきたネット [秋田県議会]のことであろうか?小松議員と同じく自由民主党所属である。望月友美子先生は、公益財団法人日本対がん協会(日本対がん協会 がん征圧を目指して)の参事であり、禁煙推進・対がん事業開発を担当している。タバコの臭いとは残留タバコ成分への曝露、つまり三次喫煙を指すものと思われるが、大気中の亜硝酸と反応し、ニトロソアミンという発癌性物質に変化することが指摘されている: www.hiroshima.med.or.jp 望月友美子(がんサバイバー・クラブ - タバコフリー社会への道)博士がこれを否定するとは考えにくい。県議会の議事録を検索すると、『「秋田県議会がん対策推進議員連盟」19名で国立がん研究センターを訪問し、日本対がん協会の望月医師からお話を伺った』との発言があった。がん対策推進議員連盟に杉本議員が所属しているのか。
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一般に喫煙者は健康への影響を過少評価することが知られている。厚生労働省が2016年に出したいわゆるタバコ白書「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135586.html)の本文307ページには、ニコチン依存症の病態の認知的側面として、『無意識に喫煙の有害影響を軽視する傾向が現れる』と指摘されている:
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杉本議員が喫煙者であるかは不明であるが、小松議員が三次喫煙に理解を示さず、その健康への影響を軽視しているように伺える。

答弁(10:06) 佐竹 知事

あのー、いや私も46歳まで、まあ結構ヘビースモーカーで、まあある時に、え、意をえー、決っして、それ以来、非常にあのまああの、一本も吸ってございません
えー、で、それからまあ暫くの間、まあそれから24年5年になりますけれど、まあ10年ぐらいは殆ど、自分も吸ってますんで、えー経験ありますんで、そー臭い、あるいは、そういう、まあ、あの、えー、気がそう、そういう風な気にならなかったんですけれども、やっぱり最近になりますと、まあ完全にニコチン分も、おー、もう体内にないんでしょうから、ある程度その意識をするという、まああの、煙のみならず、当然あの色んな粒子が入りますんで、まあ分煙という状況でも、えーかつて、秋田市で市長の時に、市の中に、いー、分煙の部屋を設けてました
ただ、あれ開けますとね、出るんですね。で、完全な分煙となるとですね、多分扉を2重にして、途中にエアー抜きをやって、さらにフィルターをやって、すさまじいね、経費がかかる
ほんとの隔離する、部屋というそういう状況になります。ですから、まあ、今でもあの市のあそこの、あの横通りますとね、臭うんですね、ですからそれを、まあ、あの、まあ、確かにタバコ税を払っている方沢山いますけれども、まあ、えー、まあこれ一般財源ですので、まあその、吸わない人も含めて、それを行政が、多額の経費をかけて、これをですね、そういう所の分煙の、えー施設を作ることが、まあ県民理解を得られるかどうかという、こういうことも、一方でございます。
まあそういうことからして、また県内でですね、まあ私もあの秋田市にクリーンデーで、えー、路上の、おー、清掃をしたことがございますが、意外とですね、あの、秋田市の人は、あのー、ルールを守って、あの、おー、ポイ捨てじゃなくて、ちゃんとこう入れます。ですから殆ど秋田市内には、あの、吸い殻落ちてません。
まあそういうことで、あの非常にそういう意味では、あの、えー、タバコを吸う方の、あのマナーもいい訳ですから、そういことで、まあ、一般的にそういう分煙の、処置をしなくても、しかるべき、まあ、あの、おー、拡散するとこで、吸っていただいて、自分でその吸い殻を処理するという、これが出来るんじゃないかなという、そういう思いが致します。

佐竹知事は元喫煙者であり、現在はタバコの臭いも気になるとのこと。勿論そういった個人的事情を以て敷地内禁煙を進めるわけでなく、"分煙"に多額の費用がかかり、また効果に乏しいことも秋田市長時代の経験から説く。なお、"分煙"に効果がないことは科学的に証明されている。必ず煙が漏れるからである。これは前出のタバコ規制枠組条約第8条のガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/dl/fctc8_guideline.pdf)にも『換気、空気濾過、喫煙指定区域の使用(専用の換気装置の有無にかかわらず)など、100%の無煙環境以外のアプローチには効果がない』指摘されている。つまり、空間分煙はもとより喫煙室の設置や時間帯分煙など意味はなく、完全禁煙のみが、唯一の正しい受動喫煙防止対策であるということだ:
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質問(13:00) 小松 委員

まあ私に言わせるとやっぱりあのー喫煙というのはまあ、医学的には見るとまあ弊害ばっかりが強調されて、で、今の状況を考えると我々喫煙者は、いかにもその罪悪感に苛まされるようなですね、社会の雰囲気ですけれども、まあ私に言わせれば、まあ喫煙というのも一つの文化だと思うんですよね。
それをやっぱり一方で税金を貰っていながら、そして、えー、一番のそのシンボルたる、敷地内は貰っている人達の公共施設は、あー、禁煙するってのは、やっぱり、ちょっと偏っているんではないかと、思うんですけれども、まあ、あー因みにですね、今朝、あのー、議会棟に来てから私、20歳から喫煙したとすればですよ、まあ、20歳ってとこはちょっと微妙ですけれども(※議場から笑い)、まああのー、今まで50年間一日2箱吸いました。で 一本12円50銭でございますから、計算してみますと、912万5千円になるんですね、だから相当貢献してるつもりなんですよ(※議場から笑い)。
だけれどもね、やっぱりそれはそれで、ごちそうはごちそうで、後はダメだってのはいかにも偏ったやり方で、と、思えてならないんですけれども、まあ、あー、それも時代の流れで致し方ないのかな、と思っています(※議場から笑い)。
またあのー、今日の私の質問は、あー今朝、私の方のお偉いさんから、「まあ無駄な抵抗だ。イタチの最後っ屁だ」と言われましたけれど、まあ少ないとはいえ、この県中でも結構な人いる訳でしてですね、まあ先程申し上げましたように、県内でも2,3割の人が喫煙することから鑑みると、やはりあのー、是非知事には、それこそ大局的な見地に立って、えー、まあ、全面禁煙でなく、うー、分煙、幸いにもまああの、JTさんの方では、そういう施設をする場合は、うちの方で事業費を、おー面倒見ると、こういってくれてる話もある訳でして、是非再考願えないものかなぁと、思いますけれども、この点について、今一度知事からご見解をお考えをお述べいただきたいと存じます。

しつこく敷地内禁煙に反対し、知事に食い下がる小松委員であるが、ここで自身の喫煙歴を紹介する。読みようによっては、未成年のうちから喫煙していたことを白状したことになるが、当然それは法律に違反する。未成年者喫煙禁止法の第1条だ: e-Gov法令検索
ここで笑いが起きる所に議会の気の緩みを感じる。未成年が喫煙するとニコチン依存を形成しやすいことが知られている。そのためタバコ産業のターゲットは主に未成年である。一旦ニコチン依存に陥らせれば後は熱心なリピーターとなって放っといてもタバコを買ってくれるからだ。そして実際、喫煙者のほとんどは未成年のうちから喫煙を開始する: www.kameda.com

小松委員のブリンクマン指数は2,000である。ブリンクマン指数とは喫煙が人体に与える影響を知るための指数であり、1日平均の喫煙本数×喫煙年数で算出される。『400以上で肺がんが発生しやすい状況になり,600以上の人は肺がんの高度危険群といわれています。また,1200以上で喉頭がんの危険性が極めて高くなるといわれています。』とのことである。小松委員の場合は1箱20本の銘柄を喫煙しているとすると、50年×40本=2,000という極めて高い値を叩き出したことになる。喉頭がんの危険性が極めて高くなる1,200を優に超える。一度検査をした方がよいのではないだろうか。
wakakusa-family.com

癌にかかればその治療には多額の医療費がかかる。厚生労働省の研究班による発表では、喫煙による損失が2兆円を超え、その大半が医療費が占めるとされている。累計で高額のタバコ税を納めているなどと議会で自慢している場合ではないだろう。
www.tokyo-np.co.jp

答弁(15:20) 佐竹 知事

あの一方で、まああのー、明らかにまあ医学的に、まああのえー、特に高齢化に伴なって、えータバコのおー害が、特に高齢になるに従って、まああのー、うー、殆どのまあ癌あるいはまあ消化器系も含めて、あるいは糖尿病、色んな面で、相当色んな、あー、えー影響があるということは、まあ医学的に、いー認められておることでございます。
まあそういう意味で、やはり、えー、自らの健康を守るという意味まあ、あのこれは私もあまり言えないんですけれども、酒もね、程々だといいんですけれど、飲み過ぎはこれ害になるんです。
ただ、まあお酒と、おー、は、については、あのー、えー人に迷惑をかけずに、いー呑めますので、ただタバコの場合は、自分の健康にも影響しますんで、えー今、あのー、健康寿命日本一のアクションプログラムである、減煙から禁煙、と出来るだけタバコはですね、あのー、吸わないように、という、まあ、最終目標は、秋田から喫煙者を無くす、という、こういう大きな(※議場から笑い)目標でございます。
まあ、それが税金にどうなるかということは、これは、国家的課題で、またその分は、様々な税のですね、他の方の色んな面の、負担があるかも知れませんけども、いずれ、医療費の関係もございますので、そう簡単にこの税をですね、なくなったからこれが全部、あの、おー、無駄になるという、あ無駄になるというか、えー、これが全部マイナスという、そういう様にも捉えられない状況にもございますので、まあいずれ、何とか、えー、全国でも初でございますが、ある程度そういうことによって、えー、多くの、喫煙しない方の、色んな面の評価、あるいは県に対する、イメージアップということもありますんで、まあ、あの、何とか、この、おー、庁舎内の、庁舎敷地内禁煙については、まずは,ご理解願いたいというのが、本音でございます。

ここらへんから佐竹知事の答弁がたどたどしくなるが、タバコは万病の元と非常によいことを言っておられるので自信を持ってもらいたい。『医療費の関係もございます』とは前出の喫煙関連疾患による医療費負担のことを指すと思われる。飲酒と喫煙の違い、つまり過度の飲酒は健康に害があるが自分に限ること、一方で喫煙が受動喫煙により他者へ健康被害を及ぼすことも説く。

ここで、『最終目標は、秋田から喫煙者を無くす』と、壮大な目標が掲げられた。素晴らしい。タバコは本質的に致命的性質を持ち、しかも慢性閉塞性肺疾患(COPD)など生活の質(QOL)を著しく下げる疾病への罹患リスクを上げるのであるから、健康寿命日本一を目指すのであれば、当然のことである。ここで笑いが起きたことは本当に残念なことである。知事には挫けず頑張ってもらいたい。

質問(17:36) 小松 委員

まあ知事今の秋田県から一人でも、タバコを吸う人をなくす、といいましたけどもね、知事がそう言えば言う程ですよ、私達喫煙者あるいはその生業としているタバコ耕作者、それからタバコ小売り屋さん、こういった人達はやっぱり罪の意識にね囚われる訳ですよ。だからやっぱり一方でそういう人達もいるということを、知事には是非そのご認識をいただきたいとうことで、えー、と思っております。
いずれ、えー、何といいますか、えー、その先程申し上げましたように、喫煙というのも、一つの古来から続いている文化であることは、事実でありますので、その点にも留意して、対応していただきたいと思います。
何かあの、私の質問が、至らないもんですから、えー、知事には煙に巻かれたような答弁ですけれども(※議場から笑い)、まあこれも致し方ないと思いますが、是非あの、うー、全面禁煙、敷地内全面禁煙については、再考をお願いしてこの項は終わりたいと存じます。
よろしくお願い致します。

小松委員は再度しつこく敷地内禁煙の撤回を求めた。喫煙者、耕作者、販売業者が罪の意識を持つというのは伏線があったようで、佐竹知事は昨年2017年の北海道・北東北知事サミットにて『タバコはもう10年ぐらいでなくなる。衰退するものは早くつぶした方がいい』との発言をしていた。サミットのテーマが「北海道・北東北3県の健康づくり~北の「健康長寿圏」づくりに向けて~」であったため出た発言のようだ。この発言が議会で取り上げられ、転作について議論された。
小田美恵子議員の質問より:
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佐竹知事の答弁より:
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加藤鉱一議員の質問より:
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佐竹知事は代替品目として『園芸品目や、既存の乾燥施設を活用できるニンニクやタマネギ、大根等』と答弁した。加藤鉱一議員が紹介したピオーネブドウとは岡山県新見市のJA阿新(あしん)の例を指すようだ。「1988年、葉タバコからの転換で、37戸がゼロから始めました。」とある:
home.ja-ashin.or.jp

タバコ規制枠組条約(たばこ規制枠組条約)の第22条「科学的、技術的及び法的な分野における協力並びに関連する専門知識の提供」の1(b)(iii)には、「適当な場合には、経済的に実行可能な方法により農作物を代替作物へ転換することについてたばこの耕作者を援助すること。」と転作支援についての規定もある。県が主導し、健康に資する作物に転換し、健康長寿の県として発展してもらいたいものである。