京都市立病院周辺での路上喫煙対策は2ヶ月に1度のチラシ・ティッシュ配り
京都市立病院(中京区)は以前より敷地内禁煙である。その周辺路上において路上喫煙する患者らがいるようで、タバコの不法投棄が散見される。このことは住民また市会からも指摘を受けており、どのように対策をしているのかと思い調べてみた所、周囲にポスター掲出をする他に2ヶ月に1度チラシやティッシュを配り啓発活動をしていることが分かった。
しかし効果は薄いように感じる。タバコに含まれるニコチンの依存性(習慣性)はコカインやヘロインといった違法薬物に匹敵するものがあるので、日常的に巡回しなければ路上喫煙また吸い殻の不法投棄は根絶出来ないように思う。併せて禁煙指導も行うべきだ。
京都市立病院周辺での路上喫煙・吸い殻投棄
京都市立病院は中京区に位置し、南は五条通に面し、東を御前通(おんまえどおり)が走る。その東門周辺に吸い殻が多数投棄されているのを見かける。2019年5,6月のある日の様子:敷地内禁煙の掲示が見えるが、そのすぐ前で喫煙し、吸い殻をその場に投棄したものと考えられる。当然受動喫煙も生じただろう。吸い殻投棄が法令違反であることを措くとしても、これら路上喫煙は条例違反である。京都市内は路上喫煙禁止条例により全域で路上喫煙が禁止されているからだ: 京都市:路上喫煙はやめましょう!
「路上喫煙はやめましょう」という掲示もすぐ近くにあるが、効果に乏しいようだ:
市会での質疑
2018年9月20日、京都市会の予算特別委員会第2分科会(第2回)において中野洋一委員(民主党 京都市会議員 中野洋一)が病院周辺での路上喫煙による受動喫煙問題を取り上げた。健康増進法が改正され敷地内禁煙を採用する病院が増加している。それら病院の周辺路上で受動喫煙が発生している。まずは京都市立病院が模範として受動喫煙を撲滅し、その上で他の私立や国立病院に対して指導すべき、との意見だ:
まずは市立病院周辺では一切その周辺にお住まいの方には受動喫煙の被害は与えないと,こういう風な覚悟を持って取り組む,そしてそのうえで,それ以外の私立,国立含めての病院に対して,周辺の住民に対して受動喫煙をさせないように徹底して指導するというところが大事だと思いますし,いわゆる率先垂範する部分でその指導の効き目も出てくると思いますので,是非そこについては,改めて市立病院を抱えている京都市として病院敷地内全面禁煙を進めているんであれば,病院敷地外も全面禁煙になるような,受動喫煙させないような環境を構築するということが求められていると思います
なお前掲の「路上喫煙はやめましょう」はこれ以前より掲示されていた。
京都市立病院周辺における街頭啓発
住民や市会の声を受け、2018年10月25日(木) 9:30~10:30の1時間に亘り、京都市立病院周辺路上において街頭啓発が行われた。路上喫煙禁止条例を所管する京都市市民文化局くらし安全推進部くらし安全推進課の職員が出向き、チラシとポケットティッシュを配布するものだ。市立病院の経営企画課が作成した資料とくらし安全推進課が作成した計画書を示す: 計画書の別添街頭啓発範囲図はこちら: 丸囲みされた「①市立病院東側出入り口付近」が冒頭に示した写真を撮影した場所だ。
この後も継続して2ヶ月に一度、偶数月に街頭啓発を実施していると説明を受けたが、果たして効果はあるのだろうか?病院作成資料には「毎週火曜日に病院周辺美化ボランティア活動等を行っている」ともあったが、写真で示した通り2019年5,6月に吸い殻投棄が見られた。頻度が少な過ぎるように思う。タバコに含まれるニコチンの依存性の強さを鑑みると日常的に巡回すべきではないだろうか。
ニコチンの依存性の強さ
日本医師会のウェブサイトに「ニコチンは、ヘロインやコカインなどの麻薬と同じくらい依存性が高い!」とあるようにタバコに含まれるニコチンは非常に依存性が高いことが知られている: 禁煙の医学 | 禁煙は愛 | 禁煙推進Webサイト
JTの調べ( 2018年「全国たばこ喫煙者率調査」、男女計で17.9% | JTウェブサイト)によると喫煙者の1日当たり平均喫煙本数は「男性 17.7本、女性 14.4本」である。朝から晩まで吸っているということだ。タバコが生半可な"嗜好品"でないことがよく分かる。コーヒーを一日10杯以上飲むような人には中々お目にかかれない。アルコールを朝から摂取する人もそういない。ニコチンがこれらと一線を画す依存性薬物であるということだ。
ニコチンに依存した状態をニコチン依存症というが、厚生労働省が2016年に出した「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」の本文307ページにはその病態の認知的側面として
喫煙の個人的価値が相対的に上昇して他の価値(健康,家族等)を凌駕する
との指摘がある(出典: 「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」について)。健康や家族よりも喫煙が大事なのだから、条例による規制などおかまいなし、ということだろう。
このような薬物事案への対処として、2ヶ月に1度の啓発活動が十分とは到底思えないし、実際に吸い殻が投棄されていた。
京都市立病院における禁煙支援の取組
京都市立病院では
- 禁煙外来(禁煙外来 | 京都市立病院)
- 禁煙教室(禁煙教室 | 京都市立病院)
を開設・開催し、入院患者や地域住民の禁煙を支援している。禁煙外来のチラシには
喫煙の習慣は「ニコチン依存症」という治療が必要な病気です。
と喫煙習慣そのものが治療が必要な病気である旨明確に打ち出されている(禁煙外来のページ中のリンク「詳細はこちら」より)。
くらし安全推進課の考え
くらし安全推進課は病院とは違った考えに基づき街頭啓発を実施している。路上喫煙禁止を呼びかけはするが、喫煙者に卒煙を促そうとまでは考えていない。現に配布するチラシの裏面最下部(画像右下)には「喫煙はマナーを守って、決められた場所で行いましょう。」とある:病気を治しに病院に来ている者に対し適切な内容だろうか。喫煙は様々な疾病の治癒に悪影響を及ぼす。特に手術後の合併症のリスクを増大させる: 厚生中央病院 | 手術前の禁煙のお願い
縦割りの枠を越えて
病院の周囲であろうと喫煙せずにはいられない者には禁煙治療を促すべきではないか?他の患者へも受動喫煙を生じさせ悪影響しかない。周囲で路上喫煙するようであれば治療を中止する、と厳しい態度に出れば禁煙への動機付けにはならないか。敷地内は病院、周辺路上はくらし安全推進課と担当が違えど、敷地内外を行き来するのは同じ喫煙者である。縦割りの枠を越えた禁煙推進、ニコチン依存症治療の取り組みが必要に思えてならない。