ラグビーワールドカップ2019日本大会は2020東京オリンピック・パラリンピックと異なり会場が敷地内禁煙ではない。各会場に喫煙所が設置されている。
そればかりか、あろうことに東大阪市の花園ラグビー場はJTから喫煙所の寄贈を受けた。タバコ規制枠組条約(FCTC)第5条3項の実施のためのガイドライン「たばこ規制に関する公衆衛生政策をたばこ産業の商業上及び他の既存の利益から保護すること」に違反する所業だ。
喫煙所は規模が大きい割には動線に近く、また煙を遮る措置が施されていない。受動喫煙が生じることだろう。なお喫煙所はラグビーのフィールドを模した悪趣味なものだ。
参考:
- 「ラグビーワールドカップ2019日本大会」におけるタバコ対策に関するお願い を送付いたしました|日本禁煙学会
- ラグビーW杯、会場ごとに屋外喫煙所 五輪と対照的:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)
経緯
2018年
2019年
喫煙所
メインエントランス(写真左方向)の向かって右手に位置する:
南側から見た様子:
意匠はラグビー場を模したもので、公式ツイッターアカウントでも紹介されていた(削除済):
煙草を吸わない人でも立ち寄ってみたくなりますね!
とあることからも、受動喫煙防止に意識が及んでいないことが伺える。
寄付収受について(通知)
2018年9月14日付け東大阪市長よりJT大阪支社長への文書がこちら:
覚書
9月20日に締結された覚書がこちら:
第7条に市の契約違反時にJTが取り得る措置が定められている。JTと地方自治体との覚書は様々見て来たが、この条項はここでしか見たことがない。恐らくそれなりの負担があったためそう簡単に撤去されないよう予防線を張っているのだろう。
タバコ規制枠組条約(FCTC)第5条3項の実施のためのガイドライン
タバコ規制枠組条約(FCTC)はその第5条3項にて締約国に対し、
たばこ規制に関する公衆衛生政策の策定と実施にあたり、国内法に従い、たばこ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護するために行動する
ことを求めている。なぜなら『たばこ産業と公衆衛生政策の間には、根本的かつ相容れない利害の対立が存在する(原則1)』からだ。
第5条3項の実施のためのガイドラインによると、市町村にも適用される。つまり東大阪市にも適用される。とすると花園ラグビー場のような多くの人が集まる場所での受動喫煙防止対策も公衆衛生政策の一環としてタバコ産業から保護されるべきだろう。しかしながら市がJTからの寄贈を受け入れたことが、ガイドラインの勧告6.2に違反する。
JTはCSR(社会貢献活動)と称してスタンド灰皿の寄贈をしており、花園ラグビー場への喫煙所寄贈もその延長線上にあるものと考えられる。
一方、ガイドラインの勧告6.2は、
6.2 締約国はたばこ産業の社会的責任と称される活動を是認、支援、提携又は参加すべきではない。
と示している。(「社会的責任と称される活動」とはCSR活動のこと。)
つまり、東大阪市がJTからの寄贈を受け入れたのは、勧告6.2に反し、JTのCSR活動と提携したと理解することが出来る。
結局、受動喫煙が生じうる場所に喫煙所が7年間も継続設置されるのだから、JTの利益が優先され、公衆衛生政策は迫害されたと評価すべきだろう。
参考:
- 「JTがやっているやってはいけないことCSR(社会貢献活動)とは?」のリーフレットができました|日本禁煙学会
- WHO たばこ規制枠組条約第 5 条 3 項の実施のためのガイドライン「たばこ規制に関する公衆衛生政策をたばこ産業の商業上及び他の既存の利益から保護すること」https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/dl/fctc_5-3_guideline_120506.pdf