小中高の保健体育の検定教科書における喫煙に係る記述の比較

学習指導要領は、保健体育の科目で教える内容として、喫煙が健康を損ねる原因であること等を定めている。
学習指導要領「生きる力」:文部科学省

令和8年度に小学校・中学校・高等学校で使用される保健体育の教科書全ての見本図書を教科書センターで閲覧し、喫煙に係る記述の簡単な比較を行った。
教科書目録(令和7年4月):文部科学省

高等学校

検定済年は令和7年
令和3年検定の第一は割愛

発行者の略称 大修館 大修館 第一
書名 現代高等保健体育 改訂版 新高等保健体育 改訂版 高等学校 改訂版 保健体育Textbook
FCTC(タバコ規制枠組条約)への言及 O O O
加熱式タバコへの言及 O X O

凡例: ありO、なしX

大修館の「新高等保健体育 改訂版」は、著者に片野田耕太氏(国立がん研究センター)がいることもあってか、日本のタバコ対策が諸外国に比べ大きく遅れていることを明らかにする、優れた内容と思う。他方、同じ大修館の「現代高等保健体育」と異なり、加熱式タバコへの言及がなかったように思う。

第一は、「なぜ、飲酒や喫煙を禁止しないのだろうか?」という問いを立て、タバコを「嗜好品」と位置付けた上で議論を展開し、「喫煙や飲酒をする人もしない人も、お互いに配慮しあい、個人の意思を尊重した社会をめざしたいです。」と結論付ける、対話型のケーススタディを掲載している。
「ニコチンには依存性があり、たばこへの依存の原因となります。」と別のページに書かれているのに、個人の「意思」を尊重、とあるのは意味が分からない。
また、広辞苑を始めとする辞書において、タバコはもはや嗜好品ではないことを踏まえていない:
news.yahoo.co.jp

中学校

使用学年は1-3
検定済年は令和6年(ただし、大日本は令和2年)
書名は割愛

発行者の略称 東書 大日本 大修館 学研
FCTC(タバコ規制枠組条約)への言及 X O X X
加熱式タバコへの言及 X O O O
日本たばこ協会の資料使用 O(ポスター) X X O(ロゴ)

凡例: ありO、なしX

東書のポスターとは、日本たばこ協会の2022年度20歳未満喫煙防止ポスターのこと:

2022年度20歳未満喫煙防止ポスター

こんなポスターは教科書に使用すべきでない。
タバコの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)第 13 条実施のためのガイドライン(たばこの広告、販売促進、および後援)の7頁には、

「青少年喫煙防止キャンペーン」などのたばこ産業の公教育キャンペーンは、それを他者が実施するときは「貢献」が含まれているため、またたばこ産業自体が実施するときは企業の販売促進になるため、禁止しなければならない。

と記載されている: https://www.health-net.or.jp/tobacco/archive/pdf/GL_article13.pdf
FCTCを知っていれば、日本たばこ協会のポスターを教科書に用いようなどとは考えないはずだ。
ポスターは、喫煙が法律上禁止されていることを強調するのみで、その理由には触れないものである。喫煙の害を知られてしまっては、20歳になってもタバコを吸ってくれず、困るからだろう。
東書は、加熱式タバコにも唯一触れておらず、およそ使用に堪えるものでない。

学研も日本たばこ協会の資料を使用している。ロゴとは20歳未満喫煙防止ロゴのこと。他方、オーストラリアで採用されている画像警告表示付きプレーンパッケージの写真を掲載している:

オーストラリアのタバコパッケージ

大日本は唯一、FCTCに触れている点はよいが、令和2年検定済のため、健康増進法については配慮義務の規定を「第25条の3」と全面施行前の条文で記載していて、これは「第27条」へと修正を要する。

小学校

使用学年は5・6
検定済年は令和5年
書名は割愛

発行者の略称 東書 大日本 大修館 文教社 光文 学研
ページ数 4 2 2 5 2 4
タバコ業界の資料提供 なし なし なし 日本たばこ協会 なし 北北海道たばこ販売協同組合

文教社は、中学の東書と同じく、日本たばこ協会の2022年度20歳未満喫煙防止ポスターを使用している。せっかく多くのページを割いてるのに、これでは台無しだ。
学研が北北海道たばこ販売協同組合から提供を受けた資料が何なのかは、分からなかった。