京都市では、毎年、世界禁煙デー前後の時期に合わせて、市政広報板に「路上喫煙・受動喫煙対策啓発市政広報板ポスター」を掲示している。
いずれも、路上喫煙、屋外での喫煙、灰皿の設置、望まない受動喫煙を題材とするものであるが、令和元年度から令和8年度までの8年分を並べて見ると、京都市の啓発内容には一定の変化がある。
令和元年度から令和3年度までは、「受動喫煙」や「路上喫煙」を大きく掲げ、自宅、車内、公園、バス停・駅、店舗の出入口など、受動喫煙が生じうる場面を広く示す総論的な啓発が中心であった。これに対し、令和4年度以降は、飲食店前の灰皿設置、人通りの多い場所での喫煙、公園やベンチ周辺での喫煙など、より具体的な場面へと焦点が移っている。
とりわけ注目されるのは、令和4年度以降のポスターで、「望まない受動喫煙が生じないよう、灰皿の設置・屋外での喫煙は、周囲の状況に配慮しましょう」という趣旨の文言が繰り返し用いられている点である。京都市自身が、屋外灰皿の設置を、単なる吸い殻対策や美化の問題ではなく、望まない受動喫煙と関わる課題として扱ってきたことが分かる。
もっとも、これらのポスターには、「マナー」「気づき・気づかい」「迷惑なのかも…」といった表現も目立つ。厚生労働省は、改正健康増進法について、望まない受動喫煙を防止するための取組は「マナーからルールへ」と変わったと説明している。そうであれば、行政が作成する受動喫煙対策の啓発物において、問題を再び「マナー」の領域へ引き戻すような表現には、なお検討の余地がある。
以下、令和元年度から令和8年度までの「路上喫煙・受動喫煙対策啓発市政広報板ポスター」を順に確認する。
なお、最新のポスター画像は京都市HPでも確認できる。
令和元年度
令和元年度のポスターは、「ストップ!受動喫煙」「STOP PASSIVE SMOKING」を大きく掲げ、自宅やマイカーの中、子どもや妊産婦の近く、多くの人が利用する施設の出入口付近など、喫煙しないよう注意すべき場面を具体的に列挙している。下部では、屋外の公共の場所における路上喫煙禁止や、たばこのポイ捨て禁止にも触れている。

令和2年度
令和2年度のポスターは、「ストップ!受動喫煙 路上喫煙」を大きく掲げ、条例により市内全域で路上喫煙をしないよう定めていることを明示している。また、人通りがある場所等での喫煙、自宅やマイカー内での受動喫煙、子どもや妊産婦への影響にも触れており、路上喫煙だけでなく、受動喫煙全般を対象とした構成である。

令和3年度
令和3年度のポスターは、「路上喫煙・受動喫煙」を大きく掲げ、公園、バス停・駅、家庭内、店舗の出入口、車内といった幅広い場面を取り上げている。後年のポスターが店舗前灰皿や人通りの多い場所へ焦点を絞っていくのに対し、この年度は、受動喫煙が生じうる場面を広く示す総論的な構成である。

令和4年度
令和4年度のポスターでは、前年のように複数の喫煙場面を広く並べるのではなく、飲食店前の灰皿設置に焦点が絞られている。「そこに灰皿を設置してもいいの?」という吹き出しが置かれており、京都市が屋外灰皿の設置自体を、受動喫煙防止の観点から啓発対象としていたことが分かる。

なお、このポスターは、市内各所に設置されている京都市広報板に掲示されていた。下の写真は、令和4年度のポスターが他の市政広報物と並んで掲示されていた様子である。

令和5年度
令和5年度のポスターでは、令和4年度に取り上げられた店舗前灰皿に加え、バス停・駅周辺での路上喫煙も描かれている。「お店の前に灰皿があるから入りにくいなぁ」「臭いし嫌だなぁ」という周囲の人の受け止めが示されており、屋外喫煙が受動喫煙だけでなく、店舗利用や通行環境にも影響するものとして表現されている。

令和6年度
令和6年度のポスターでは、店舗前の灰皿設置に加え、「人通りが多い場所」での喫煙が強調されている。周囲には子ども連れや通行人が描かれ、屋外であっても、場所の状況によっては煙が周囲の通行や利用環境に影響することを示している。

令和7年度
令和7年度のポスターでは、店舗前の灰皿設置に加え、公園やベンチ周辺での喫煙が描かれている。子どもや親子連れ、ベビーカー利用者が煙を避ける様子が示されており、屋外喫煙が、通行空間だけでなく、子どもが利用する生活空間にも影響するものとして表現されている。

令和8年度
令和8年度のポスターでは、令和6年度版と同様に、人通りの多い場所での喫煙が中心に置かれている。周囲には子ども、高齢者、ベビーカー利用者などが描かれており、屋外であっても、人が多く通行する場所では煙を避けにくいことが示されている。

おわりに
以上のとおり、8年分のポスターを並べると、京都市が屋外喫煙や灰皿設置を、望まない受動喫煙と関わる課題として継続的に扱ってきたことが分かる。一方で、その表現はなお「マナー」や「気づき・気づかい」に寄っており、受動喫煙対策をどのように伝えるべきかという課題も残っている。