神戸市役所本庁舎3号館4階のバルコニーで喫煙した交通局職員への処分は文書訓戒

2018年10月24日付の神戸新聞に『全面禁煙の神戸市役所庁舎で職員が喫煙、ネットに動画』というタイトルの記事があった:
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201810/0011757202.shtmlwww.kobe-np.co.jp

神戸市役所本庁舎3号館4階のバルコニーで交通局職員が喫煙している様子がネット上に動画投稿され違反行為が発覚した、という内容だ。神戸市は受動喫煙防止対策のため、庁舎建物内の全面禁煙を2011年5月31日より実施しており、このバルコニーでの喫煙も当然禁止されている。記事には

同局は「他の職員も喫煙していた可能性がある」として聴取を進めており、「全容を解明し、必要な対処をする」としている。

とあったが、続報がなく、処分内容や関与人数等が分からなかった。

訓戒(文書)

処分に係る文書を情報公開請求した所、訓戒(文書)が2件部分開示(氏名、所属・職名は非公開)された:

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訓戒(文書)
2名が関与した、ということだ。処分にいたる検討資料は全部非公開となったため、この両名がいつからいかなる頻度で同所での喫煙を繰り返したのかは明らかにされなかった。なお喫煙は主に勤務時間外になされ、職務懈怠があったわけではないと説明を受けた。この処分は懲戒処分ではなく、事実上の処分といい、厳重注意、訓戒(口頭)、訓戒(文書)の順に重くなるとのこと。懲戒処分と異なり公表されない。処分は平成30年12月26日付。

参考: 平成30年度における職員の懲戒処分 http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2019/04/20190412110301.html


文書には処分の対象となる事実が次のように指摘される:

あなたは、受動喫煙防止対策の観点から、庁舎建物内が全面禁煙であることを認識しながら、市役所3号館4階のバルコニーにおいて、喫煙した。

バルコニーで喫煙して、受動喫煙は生じるのか?

バルコニーでの喫煙であっても受動喫煙は生じる

バルコニーとはやや形状が異なるがベランダでタバコを吸っても受動喫煙が生じる。次の経路がある:

  • 呼気に含まれるタバコ煙への曝露
  • 服に付着した有害物質への曝露(三次喫煙)
  • サッシの隙間から屋内へ流入したタバコ煙への曝露


「窓を閉め切って、ベランダで吸えば大丈夫?」との問いに「窓を閉め切って吸ったとしても、タバコの有害物質は服について、部屋の中に入ってきます。」と答えるのが次のページ(横浜市):
www.city.yokohama.lg.jp


「Q.外で吸っていれば大丈夫?」との問いに

A. 喫煙後約200秒間は、吐く息にタバコの成分が残ります
 ベランダに出てタバコを吸っても、サッシの隙間からタバコの粒子が部屋に入り込むことが分かっています。
 また、ベランダなどでたばこを吸う家族がいる子どもの尿からも有毒物質が検出されています。

と答えるページ(松戸市)もある:
www.city.matsudo.chiba.jp


受動喫煙は他者への加害行為なので、その危険を伴う違反喫煙は厳しく処罰してもらいたい。

京都市立病院周辺での路上喫煙対策は2ヶ月に1度のチラシ・ティッシュ配り

京都市立病院(中京区)は以前より敷地内禁煙である。その周辺路上において路上喫煙する患者らがいるようで、タバコの不法投棄が散見される。このことは住民また市会からも指摘を受けており、どのように対策をしているのかと思い調べてみた所、周囲にポスター掲出をする他に2ヶ月に1度チラシやティッシュを配り啓発活動をしていることが分かった。

しかし効果は薄いように感じる。タバコに含まれるニコチンの依存性(習慣性)はコカインやヘロインといった違法薬物に匹敵するものがあるので、日常的に巡回しなければ路上喫煙また吸い殻の不法投棄は根絶出来ないように思う。併せて禁煙指導も行うべきだ。

京都市立病院周辺での路上喫煙・吸い殻投棄

京都市立病院は中京区に位置し、南は五条通に面し、東を御前通(おんまえどおり)が走る。その東門周辺に吸い殻が多数投棄されているのを見かける。2019年5,6月のある日の様子:

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京都市立病院の東門周辺路上での吸い殻投棄
敷地内禁煙の掲示が見えるが、そのすぐ前で喫煙し、吸い殻をその場に投棄したものと考えられる。当然受動喫煙も生じただろう。吸い殻投棄が法令違反であることを措くとしても、これら路上喫煙は条例違反である。京都市内は路上喫煙禁止条例により全域で路上喫煙が禁止されているからだ: 京都市:路上喫煙はやめましょう!

「路上喫煙はやめましょう」という掲示もすぐ近くにあるが、効果に乏しいようだ:

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路上喫煙はやめましょう(掲示及び原稿)

市会での質疑

2018年9月20日京都市会の予算特別委員会第2分科会(第2回)において中野洋一委員(民主党 京都市会議員 中野洋一)が病院周辺での路上喫煙による受動喫煙問題を取り上げた。健康増進法が改正され敷地内禁煙を採用する病院が増加している。それら病院の周辺路上で受動喫煙が発生している。まずは京都市立病院が模範として受動喫煙を撲滅し、その上で他の私立や国立病院に対して指導すべき、との意見だ:

まずは市立病院周辺では一切その周辺にお住まいの方には受動喫煙の被害は与えないと,こういう風な覚悟を持って取り組む,そしてそのうえで,それ以外の私立,国立含めての病院に対して,周辺の住民に対して受動喫煙をさせないように徹底して指導するというところが大事だと思いますし,いわゆる率先垂範する部分でその指導の効き目も出てくると思いますので,是非そこについては,改めて市立病院を抱えている京都市として病院敷地内全面禁煙を進めているんであれば,病院敷地外も全面禁煙になるような,受動喫煙させないような環境を構築するということが求められていると思います

なお前掲の「路上喫煙はやめましょう」はこれ以前より掲示されていた。

京都市立病院周辺における街頭啓発

住民や市会の声を受け、2018年10月25日(木) 9:30~10:30の1時間に亘り、京都市立病院周辺路上において街頭啓発が行われた。路上喫煙禁止条例を所管する京都市市民文化局くらし安全推進部くらし安全推進課の職員が出向き、チラシとポケットティッシュを配布するものだ。市立病院の経営企画課が作成した資料とくらし安全推進課が作成した計画書を示す:

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病院資料(左)とくらし安全推進課の計画書(右)
計画書の別添街頭啓発範囲図はこちら:
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京都市立病院 街頭啓発範囲図
丸囲みされた「①市立病院東側出入り口付近」が冒頭に示した写真を撮影した場所だ。

この後も継続して2ヶ月に一度、偶数月に街頭啓発を実施していると説明を受けたが、果たして効果はあるのだろうか?病院作成資料には「毎週火曜日に病院周辺美化ボランティア活動等を行っている」ともあったが、写真で示した通り2019年5,6月に吸い殻投棄が見られた。頻度が少な過ぎるように思う。タバコに含まれるニコチンの依存性の強さを鑑みると日常的に巡回すべきではないだろうか。

ニコチンの依存性の強さ

日本医師会のウェブサイトに「ニコチンは、ヘロインやコカインなどの麻薬と同じくらい依存性が高い!」とあるようにタバコに含まれるニコチンは非常に依存性が高いことが知られている: 禁煙の医学 | 禁煙は愛 | 禁煙推進Webサイト

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ニコチンは、ヘロインやコカインなどの麻薬と同じくらい依存性が高い!(日本医師会ウェブサイトより抜粋)

JTの調べ( 2018年「全国たばこ喫煙者率調査」、男女計で17.9% | JTウェブサイト)によると喫煙者の1日当たり平均喫煙本数は「男性 17.7本、女性 14.4本」である。朝から晩まで吸っているということだ。タバコが生半可な"嗜好品"でないことがよく分かる。コーヒーを一日10杯以上飲むような人には中々お目にかかれない。アルコールを朝から摂取する人もそういない。ニコチンがこれらと一線を画す依存性薬物であるということだ。

ニコチンに依存した状態をニコチン依存症というが、厚生労働省が2016年に出した「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」の本文307ページにはその病態の認知的側面として

喫煙の個人的価値が相対的に上昇して他の価値(健康,家族等)を凌駕する

との指摘がある(出典: 「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」について)。健康や家族よりも喫煙が大事なのだから、条例による規制などおかまいなし、ということだろう。

このような薬物事案への対処として、2ヶ月に1度の啓発活動が十分とは到底思えないし、実際に吸い殻が投棄されていた。

京都市立病院における禁煙支援の取組

京都市立病院では

を開設・開催し、入院患者や地域住民の禁煙を支援している。禁煙外来のチラシには

喫煙の習慣は「ニコチン依存症」という治療が必要な病気です。

喫煙習慣そのものが治療が必要な病気である旨明確に打ち出されている(禁煙外来のページ中のリンク「詳細はこちら」より)。

くらし安全推進課の考え

くらし安全推進課は病院とは違った考えに基づき街頭啓発を実施している。路上喫煙禁止を呼びかけはするが、喫煙者に卒煙を促そうとまでは考えていない。現に配布するチラシの裏面最下部(画像右下)には「喫煙はマナーを守って、決められた場所で行いましょう。」とある:

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路上喫煙禁止条例の啓発チラシ(表裏)
病気を治しに病院に来ている者に対し適切な内容だろうか。喫煙は様々な疾病の治癒に悪影響を及ぼす。特に手術後の合併症のリスクを増大させる: 厚生中央病院 | 手術前の禁煙のお願い

縦割りの枠を越えて

病院の周囲であろうと喫煙せずにはいられない者には禁煙治療を促すべきではないか?他の患者へも受動喫煙を生じさせ悪影響しかない。周囲で路上喫煙するようであれば治療を中止する、と厳しい態度に出れば禁煙への動機付けにはならないか。敷地内は病院、周辺路上はくらし安全推進課と担当が違えど、敷地内外を行き来するのは同じ喫煙者である。縦割りの枠を越えた禁煙推進、ニコチン依存症治療の取り組みが必要に思えてならない。

京都府警が2019年7月1日から敷地内禁煙を実施。先立つ卒煙支援が手厚い。

※令和2年10月1日より特定屋外喫煙場所が設置されている。

京都府警が2019年7月1日から警察庁舎の敷地内全面禁煙を実施した:

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令和岩塩7月1日から敷地内全面禁煙です(京都府警察本部)

ウェブサイト(リンク切れ)https://www.pref.kyoto.jp/fukei/kosei/kinen.htmlには、

京都府警察では、望まない受動喫煙を防止するため、7月1日から警察本部、運転免許試験場、警察署、交番等、警察施設の建物及び敷地内において、全面禁煙となりますので、皆様のご理解とご協力をお願いします。

とある。この経緯を情報公開請求し調べた。

京都府警はかねてより禁煙を推進しており、今回の敷地内禁煙の検討にあたっては反対意見もなくすんなり決定したとのこと。そのため大阪府警であった特定屋外喫煙場所の検討資料などは一切出て来なかった。4月に敷地内禁煙の方針が決まり、7月の実施に向けた5,6月の2ヶ月間、喫煙者向けの禁煙(卒煙)支援の取り組みが様々用意されていた。

参考:
muen-desire.hateblo.jp

経緯

2018年

2019年

  • 4月11日 健康増進法の一部改正に伴う受動喫煙防止対策の推進について(公安委員会会議資料)
  • 4月17日 健康増進法改正に伴う敷地内禁煙及び禁煙に係る諸対策の実施について(通達)
  • 5月7日 禁煙ラリー開始(6月30日まで)
  • 7月1日 敷地内禁煙を実施

健康増進法の一部改正に伴う受動喫煙防止対策の推進について

2019年4月11日付の公安委員会会議資料「健康増進法の一部改正に伴う受動喫煙防止対策の推進について」を示す:

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健康増進法の一部改正に伴う受動喫煙防止対策の推進について
件名毎に見る。1目的及び2改正内容は府警に限ったものでなく省略する。

3 当府警の方針

中程に

法の施行日(平成31年7月1日)に合わせ、警察庁舎敷地内完全禁煙とする。

とある。この時点で新元号は「令和」と発表されていたのだから「平成31年」は誤りで「令和元年」が正しいはずだが誤植だろうか。いずれにせよ法の趣旨に忠実に従う方針だ。

4 喫煙者に対する禁煙へ向けた動機付け対策

喫煙者に対する手厚い卒煙支援が用意されていた。7月の敷地内禁煙に向けて5,6月の2ヶ月間でタバコを止められるよう促す内容だ。タバコの害を学習するだけでなく、タバコによる自分の体(肺)への影響を可視化する、また禁煙挑戦時に再喫煙してしまわないための対策など多方面からの支援が考えられていた:
(1) 禁煙ラリー
(2) ハイチェッカー(肺年齢測定器)の貸出
(3) 禁煙講座(本部産業医による喫煙による健康障害についての講演)
(4) 禁煙指導
(5) 福利厚生会カフェテリアプラン補助事業
後程詳しく紹介する。

5 その他

禁煙ラリーの成功率が18.4%と低めなのが気になる(^^;

健康増進法改正に伴う敷地内禁煙及び禁煙に係る諸対策の実施について(通達)

4月17日に部長、所属長宛に通達「健康増進法改正に伴う敷地内禁煙及び禁煙に係る諸対策の実施について」があった:

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健康増進法改正に伴う敷地内禁煙及び禁煙に係る諸対策の実施について(通達)
主な通達内容は次の2点:

  1. 敷地内禁煙の実施
  2. 禁煙活動の支援

「5 その他」とあるのは「3 その他」の誤植であろう。

1 敷地内禁煙の実施

求めるのは次の2点:

(1) 所属職員に対する完全禁煙となることの周知
(2) 警察庁舎敷地内における喫煙場所の撤去等

これらに従い例えば北警察署、八幡(やわた)警察署や城陽(じょうよう)警察署では通路また入口近くの灰皿が撤去された:

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北警察署での灰皿撤去前後
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八幡警察署での灰皿撤去前後
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城陽警察署での灰皿撤去前後
他にも入口近くに灰皿が置かれていた警察署はいくつかあった。来庁者が入館する前の"消炎用"との建前であったが、事実上喫煙所として機能していたものもあった。改正健康増進法においてはそのような曖昧な位置付けは許されない。敷地内禁煙の第1種施設に屋外であろうと灰皿を設置しているだけでも違法となる: 健康増進法 | e-Gov法令検索

(特定施設の管理権原者等の責務)
第二十五条の六 特定施設の管理権原者等(管理権原者及び施設の管理者をいう。以下この節において同じ。)は、当該特定施設の喫煙禁止場所に専ら喫煙の用に供させるための器具及び設備を喫煙の用に供することができる状態で設置してはならない。

2 禁煙活動の支援

4月11日付の公安委員会会議資料にあった禁煙へ向けた動機付け対策が喫煙者向けに詳述されている。

(1) 禁煙ラリー

イ 対象者が希望者だけでなく「所属長が喫煙習慣を改善させる必要があると認める者」を含むことが分かる。強制的に参加させてうまく卒煙させられるものなのだろうか・・・?

喫煙者には、加熱式たばこを使用している者を含む。」と明記している点がよい。たまに加熱式タバコで卒煙した、と勘違いする喫煙者がいるが、全くの誤りである。

参加者向けに肺年齢や肺機能の状態を知るための機器(ハイチェッカー=スパイロメーター)の貸し出しもしている。タバコを吸っていると息を吐く機能が衰える。それを知るための機械だ。酷く進むとCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といい常に息切れが続くような状態となる。早期発見が重要だ。
www.sankei.com

(2) 禁煙講座の開催

産業医による禁煙講座が4度開催された。本部だけでなく警察署勤務の者でも参加出来たようだ。非喫煙者の参加を許す点、非常によいと思う。喫煙は喫煙者本人だけでなく周囲の非喫煙者にも受動喫煙により悪影響を与える。自らの健康を守るためにも知っておくべきことだ。

5 その他

(1) 禁煙促進用品(恐らくニコチンパッチ)への補助があるようだ。禁煙挑戦時の離脱症状を緩和する作用がある。
medical.nikkeibp.co.jp

禁煙ラリー参加者名簿・実施結果

通達に禁煙ラリー参加者名簿(別紙1) と禁煙ラリー実施結果(別紙2)の用紙が付属していた。別紙2の注2に「※加熱式たばこも「喫煙」に含む。」と再度注意書きがある点よい:

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禁煙ラリー参加者名簿(別紙1)・実施結果(別紙2)
卒煙は進んだのだろうか・・・?