西宮市長選挙(2022.3.27)候補者の喫煙歴やタバコへの認識

2022年3月27日、西宮市長選挙が投開票される。吉岡 政和、増山 誠、石井 登志郎の3氏が立候補した。

西宮市は「スモークフリーにしのみや」を掲げ、受動喫煙のない社会を目指しているが、市役所の敷地内にはJTが寄贈した灰皿が設置され、周囲に受動喫煙を生じさせている(コロナ対策のため閉鎖中)。

「スモークフリーにしのみや」を実現できる候補はいるのか?残念ながら選挙戦の争点にはなっていない。選挙広報を見ても関係する記載がない。

そこで、各候補者の喫煙歴やタバコに対する認識を調べてみた。

スモークフリーにしのみや

市のウェブサイト、「スモークフリーにしのみや」の推進について|西宮市ホームページ には、

西宮市では市民が受動喫煙を受けることのないまち「スモークフリーにしのみや」を目指しています。

とある。

市役所の特定屋外喫煙場所から生じる受動喫煙

2019年7月1日に一部施行された改正健康増進法により、市役所の敷地内における喫煙は禁止されたが、「特定屋外喫煙場所」という例外規定により、西宮市役所敷地内に2ヶ所(1階、屋上)喫煙場所が設置された。

どちらも新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、閉鎖中であるが、1階の喫煙場所は、周囲に受動喫煙を生じさせている(タバコ臭がする)ことが、令和元年12月5日(木)に実施された職場巡視で指摘された:

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職場巡視報告書より抜粋

西宮市は「スモークフリーにしのみや」を掲げていながら、市役所では実現できていない。

なお1階の喫煙場所の灰皿はJTによる寄贈。

muen-desire.hateblo.jp

各候補者の喫煙歴

川村 よしと 西宮市議会議員のツイートによると、

氏名 喫煙の有無
吉岡 政和 非喫煙者
増山 誠 喫煙者
石井 登志郎 (たぶん)非喫煙者

とのこと:


なお、石井候補は、現在は非喫煙者だが、元喫煙者であることを明らかにしている(後述)。

各候補者の喫煙やタバコに関する認識

各候補者のツイッターやウェブサイト、議会での発言、また西宮市の公文書を調べた。

いずれの候補の選挙広報にも、タバコに関する政策は掲げられていない:
選挙公報(西宮市長選挙・西宮市議会議員補欠選挙)|西宮市ホームページ

吉岡 政和 候補

前、兵庫県議会議員。

川村市議会議員のツイートによると、非喫煙者。川村議員が支援する候補なので、信頼できる情報だろう。過去の喫煙歴の有無は不明。

吉岡 候補のツイッター兵庫県議会の議事録を調べても、「タバコ」、「喫煙」、「禁煙」に関する話題や質疑は皆無であった。

ウェブサイトにも基本的には何もなく、かろうじて所属していた政新会の山田知市長あて「平成22年度予算に関する要望及び施策に対する意見」が掲載されているが、参考にならない。

したがって、吉岡候補がタバコ対策にいかなる認識を持っているかは何も分からなかった。
twitter.com
yoshiokanavi.jp
兵庫県議会/会議録検索システム

増山 誠 候補

前、兵庫県議会議員。川村市議会議員のツイートによると、喫煙者。実際に喫煙行為を目撃したとのこと。

増山 候補のツイッターを調べると、次のツイートがあった:

喫煙者が新型コロナに感染しにくいと主張する論文について、

これは意外な結論で信ぴょう性も高そうだ

と感想を述べているが、そのようなことはない。

この論文の共著者はタバコ産業より資金提供を受けている人物であり、

喫煙が新型コロナを防ぐという主張はその後、完全に否定された。

とされている。


増山候補がこのような感想を持ったのは何故か?喫煙によるニコチン依存症の影響があったのか?

厚生労働省が2016年に公表した「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」には、ニコチン依存症の病態の認知的側面について、

ニコチン離脱による気分悪化を回復させる効果を“たばこの効用”と錯覚したり,有害性を認める心理的苦痛を認知変容によって軽減したりすることを指す。これらにより,喫煙の個人的価値が相対的に上昇して他の価値(健康,家族等)を凌駕するようになるとともに,無意識に喫煙の有害影響を軽視する傾向が現れる。たばこないし喫煙を人生において価値あるものと感じる認知は「嗜癖性の信念(addictive belief)」と呼ばれ,喫煙者のもともとの性格傾向ではなく,依存症の一病態であると考えられている。

と記載されている: 「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」について

この他、兵庫県議会の議事録を調べても、「タバコ」、「喫煙」、「禁煙」に関する質疑は皆無であった。

石井 登志郎 候補

前市長。元喫煙者。

喫煙歴やタバコに関する考えは、2019年7月の市長コラムで触れられている:

さて、かくいう私とタバコについてですが、この機会に触れておきたいと思います。私自身は、今は非喫煙者です。「今は」としましたのは、はい、昔は吸っていた時期がありました。今思えば、本当にタバコが吸いたかった、というよりは、「大人のたしなみ」「社交場のツール」みたいな感覚で、大学生時代から吸い始めたように記憶しています。タバコをやめていたのに、新入社員で会社に入ったら、課長も部長もタバコを吸っており、喫煙所に行くと、いつもは厳しい上司がなぜか優しく、タバコを吸いながら色々なことを教えてもらえる時間であったりしました。政治活動を始めてからは基本的にタバコはやめていたのですが、十五年ほど前、選挙の落選が決まった直後、ある方が「石井さん、次もありますよ」と言って、タバコをさっと差し出しされて、吸いたい気持ちなどないのに、吸う羽目になり、その後数か月、吸い続けたこともありました。タバコは一度吸うと習慣のようになってしまい、その時やめるのも一苦労でした。

ただ現在は、結婚し、子どもも産まれ、吸おうということは全く思わなくなりました。よくぞ昔は吸っていたものと、自分の変化が自分でも面白いと感じるものです。

正直に、私のパーソナルなタバコ遍歴(?)を書きました。こういうことですから、もしかしたら喫煙者に甘い、と思われるかもしれません。しかし、そういうつもりではありません。確かに、タバコを吸う人の気持ちはわかっている方かも知れませんが、受動喫煙でいやな思いをする気持ちも、強く持っています。あたりまえのことですが、望まない受動喫煙をなくすことは、極めて大切ですし、マナーを守れない人にタバコを吸う権利はないと思っています。今も地域の公園清掃活動に参加しますが、そこにポイ捨てしてあるタバコの吸い殻を見つけると、怒りがこみ上げてきます。子どもや妊婦の方など、第三者の方に何の配慮もないスモーカーにも、ムカッとします。どこまで行っても、吸う人のマナーなくして、喫煙者と非喫煙者の共存はあり得ません。

と、している。

市役所の喫煙スペースについては、

次に、本庁舎の喫煙スペースを改めました。これまでの喫煙所(議会棟下と市民会館南)は、歩行されている方にも煙がかかってしまうような場所であったため、この場所を廃止しました。新たな場所は、本庁舎と市民会館の間に位置し、少し奥まったところにありますので、直接に煙が行くことはない場所です。

としているが、この移設後の喫煙場所も、実際に受動喫煙が生じる場所であることは、上で述べた通りだ。

石井候補の自己認識とは違い、「喫煙者に甘い」と評価する他ないだろう。


なお、石井 候補のウェブサイトの「石井としろうが実現したこと-西宮市長1期目の実績-」には、「受動喫煙対策の推進」が挙げられ、

法律や県条例に積極的に対応して公園の禁煙など決定。また市長自らが保健所長と共に駅頭で受動喫煙防止を訴え、駅やバス停等への看板等への設置を進めるなど啓発に力を入れている。

としている:
toshiro.jp
確かに公園は禁煙となったが、禁煙の標識は小さく、実際に喫煙する者がいて、浸透しているようには思えない。

石井 候補とJT(日本たばこ産業株式会社)との関係について

「スモークフリーにしのみや」を推進するにあたって、市役所の他にも駅前や路上での受動喫煙防止を考える必要があるが、石井 候補は、JTの協力を得て喫煙場所を設置しようとしていた。

大きな間違いである。

タバコの規制に関する公衆衛生政策を策定・実施するにあたり、タバコ産業を関与させてはならないのは、当然のことであり、現役の泥棒に防犯対策の指南を受けたりはしないのと同じだ。

WHO(世界保健機関)は、

原則1: たばこ産業と公衆衛生政策の間には、根本的かつ相容れない利害の対立が存在する。

たばこ産業は、常習性があり、疾患や死亡の原因となり、また貧困の増加など様々な社会悪を引き起こすことが科学的に実証されている製品を生産し、販売促進している。このため、締約国は、たばこ規制のための公衆衛生政策の制定及び実施を可能な限り、たばこ産業から保護すべきである。

としている。

石井 候補は、このタバコ対策の根本を理解していない。

令和元年7月31日の市長レクのメモには、岡崎職員による「市長は先日のJTとの協議の席で「市として戦略を立てねば」ということをおっしゃっておられた。」との発言が記録されている:

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受動喫煙について」(市長レク)メモ 令和元年7月31日

タバコ産業とこのような協議を行ってはいけない。市の講じようとする受動喫煙対策がタバコ産業に筒抜けである。当然、タバコ産業は対抗措置を講じてくると予想される。