京都南年金事務所の出入口脇に灰皿が置かれているのに気付いた。改正健康増進法25条の3第2項(2019年1月24日施行)に規定される配慮義務に反する。
法令等違反通報窓口より通報したところ、灰皿が移設された。
移設に際し、文書が作成されてないかと思い情報公開請求したところ、所長より「文書はない。請求を取り下げて欲しい。灰皿は撤去する。」との電話があった。
灰皿は撤去されたものの、法令等違反通報窓口からは回答もなく、日本年金機構の受動喫煙防止対策への認識の甘さを感じた。
出入口脇の灰皿
出入口が2ヶ所あり、ともに脇に灰皿が設置されていた:
健康増進法25条の3第2項
2019年1月24日に一部施行された改正健康増進法25条の3第2項には、喫煙場所を定める際の受動喫煙を生じさせない配慮義務が規定されている:
(喫煙をする際の配慮義務等)
第二十五条の三
2 多数の者が利用する施設の管理権原者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない。
健発0122第1号
厚生労働省健康局長が2019年1月22日付けで出した健発0122第1号の第1の4には、この喫煙場所を設置する際の配慮義務の具体例が
喫煙場所を設ける場合には施設の出入口付近や利用者が多く集まるような場所には設置しないこと
と示されている。
出典:
健発0122第1号 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000482378.pdf
法令等違反通報窓口
京都南年金事務所の灰皿は、出入口付近にあったため、改正健康増進法25条の3第2項に規定される配慮義務が講じられていなかったことになる。
そこで、日本年金機構の法令等違反通報窓口を通じて、施設管理者の法令違反を指摘し、撤去を要望した。また回答も要望した。
参考:
法令等違反通報窓口|日本年金機構
灰皿が移設
しばらくすると灰皿が駐車場に移設されていた:
法人文書の開示
どういった判断で(撤去ではなく)移設がなされたか知りたいと思い、京都南年金事務所のお客様相談室に情報公開請求した。
日本年金機構は「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」第2条において規定される別表第一に掲げる法人である。
(定義)
第二条 この法律において「独立行政法人等」とは、独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人及び別表第一に掲げる法人をいう。
別表第一(第二条関係)
名称 | 根拠法 |
---|---|
日本年金機構 | 日本年金機構法(平成十九年法律第百九号) |
参考:
「法人文書の開示」及び「個人情報の開示」について|日本年金機構
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律: e-Gov法令検索
開示請求取下げ申出書
しばらくして(確か)所長から電話があった。「文書はない。請求を取り下げて欲しい。灰皿は撤去する。」とのことだった。
他にも本部からの指示がどうだ、とか言っていたがよく覚えていない。本部によると健康増進法における第1種施設(原則敷地内禁煙)には該当しないとのこと。事務所としては本部からのさらなる指示を待つ間、口頭のやり取りで灰皿を移設させたということだったかと思う。
文書がないなら実施機関としては不存在決定を出せばよいのだが、取り下げを求めて来た。これに応じて開示請求取下げ申出書を提出した。手数料も返還された。
灰皿が撤去
その後、確かに灰皿が撤去されていた:
他の年金事務所にも出入口脇に灰皿
年金事務所に関する「お客様の声」に基づく対応事例
出入口脇の灰皿については健康増進法が改正される以前より、別の複数の事務所でも苦情が寄せられていた。
厚生労働省健康局 総務課生活習慣病対策室長は平成22年7月30日付け事務連絡「受動喫煙防止対策について」にて
法第25条の「受動喫煙」には、施設の出入口付近に喫煙場所を設けることで、屋外から施設内に流れ込んだ他人のたばこの煙を吸わされることも含むため、喫煙場所を施設の出入口から極力離すなど、必要な措置を講ずるよう努めなければならないところである。
と示していたが、年金事務所では徹底されていなかったことが分かる。
出典:
受動喫煙防止対策について https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/tobacco/dl/renraku-100730.pdf
平成22年8月20日~8月26日受付分
お客様の声
年金事務所の喫煙所から煙が流れてくるため、煙の臭いが気になります。
分煙にもっと気をつけて欲しい。
また、窓口職員の煙草の臭いも気になります。
個別対応事例
ご指摘いただいた年金事務所では玄関脇ににスタンド灰皿を設置し、喫煙場所としておりますが、風向きにより煙草の煙が室内に流れることがあり、ご意見をいただいたものです。
年金事務所では直ちに喫煙所の位置を見直し、玄関から十分距離を保って煙が流入する可能性がない位置まで移動させました。
また、窓口職員の煙草臭については、ご相談・お手続きの際に、臭いでお客様が不快感を感じられることの無いよう留意することを、全職員に朝礼で指導しました。
なお、お客様からいただいたご意見と、事務所からの回答を事務所内に掲示しました。
出典:
https://www.nenkin.go.jp/voice/syukei/taiojireih2209.files/0927_01.pdf
平成24年10月1日~10月31日受付分
お客様の声
年金事務所に訪れましたが、事務所内に煙草の臭いがして、非常に不快でした。
煙草の煙が事務室内に入らないようにしてほしいです。
個別対応事例
当該年金事務所のお客様用の喫煙所(灰皿)は、お客様の来訪用の入口のすぐ横に設置してあり、お客様が喫煙所で煙草を吸われているときに自動ドアが開くと、事務室内に煙草の臭いが入るときがありました。
本件のご指摘をうけて、煙草の煙が入らないように、お客様用の喫煙所をお客様の入口の奥側に移動しました。
出典:
https://www.nenkin.go.jp/voice/syukei/torikuimi02.files/0000000124_0000009096.pdf