20歳の加熱式タバコ使用者に発症した急性好酸球性肺炎の報告です
— 日本呼吸器学会 禁煙推進委員会 (@JRS_kinnen) June 9, 2022
幸いにもステロイドの大量点滴投与により救命できましたが、加熱式タバコが重症肺炎の原因となることは周知していかなければなりませんhttps://t.co/ozMHeZga2b#JRS禁煙推進委員会特別報告 pic.twitter.com/Khz78TK7TN

大阪府警察では、望まない受動喫煙を防止するために、本部庁舎、警察署、交番、駐在所、門真運転免許試験場、光明池運転免許試験場等は敷地内禁煙を実施しています。皆様のご理解ご協力をお願いいたします。
とあるように、府警が管理する庁舎が対象だ。なお待機宿舎、公舎、警察学校生徒寮及び駐在所住居部分は対象外である。公用車は全車車内禁煙となった。
この意思決定の経緯を公文書開示請求し調べた所、当初は本部本庁舎に屋外喫煙場所の設置を模索していたことが分かった。健康管理センターがJTの分煙コンサルティングに相談していた。署員の健康を管理する部署が致命的有害性を持つタバコ製品を製造・販売する会社に相談を持ちかける、というのは理解に苦しむ。
最終的に敷地内禁煙とした決め手は判然としないが、検討課題として
などが挙げられていた。
経緯
太字で開示文書で明らかになった部分を示す。
2018年
- 7月25日 改正健康増進法公布
- 8月30日 健康増進法の一部改正に伴う受動喫煙対策について(健康管理センター作成)
- 9月5日 喫煙環境改善について(JTより府警宛)
- 9月14日 第1回大阪府受動喫煙防止対策懇話会
- 9月25日 本部本庁舎における喫煙場所の検討について(本部衛生委員会作成)
- 10月3日 健康増進法の改正を契機とした受動喫煙対策の推進について(警察庁長官官房給与厚生課長より通知)
2019年
- 1月10日 「望まない受動喫煙防止に向けた基本的考え方」に対するパブコメ開始
- 2月4日 大阪府警察における受動喫煙対策について(警務部案)
- 3月20日 大阪府受動喫煙防止条例公布
- 4月1日 大阪府警が敷地内禁煙を実施
- 7月1日 改正健康増進法一部施行(行政機関等の第1種施設は原則敷地内禁煙)
2020年(予定)
- 4月1日 大阪府の行政機関等(第1種施設)は敷地内禁煙(屋外喫煙場所なし)が努力義務
健康増進法の一部改正に伴う受動喫煙対策について
健康管理センターが2018年8月30日に作成した資料には、
- 改正健康増進法のポイント: 屋内は全面禁煙。屋外喫煙場所を設置可(※厚生労働省は設置を推奨するものではないと後日通知(健発0222第1号)にて明言)
- 他府県における現在の喫煙状況(兵庫、警視庁、神奈川)
- 大阪府警察における喫煙の現状
- 屋外喫煙所の施設構造(開放系、閉鎖系)
- 屋外喫煙場所を設置する場合の留意点
があり、このうち大阪府警察における喫煙の現状のページに「後日、JT喫煙コンサルティングによる屋外喫煙施設の設置可否を協議予定」との記述が見える:
なお屋外喫煙場所を設置する場合の留意点は日本禁煙学会による「屋外における受動喫煙防止に関する日本禁煙学会の見解と提言」をもとに作成されたものだ:
喫煙環境改善について
JTの大阪支社社会環境推進担当より大阪府警本部に宛てられたのが次の資料(2018年9月5日付)だ。表紙だけ示す:
本部本庁舎における喫煙場所の検討について
2018年9月25日に本部で衛生委員会が開催されたようで、本庁舎における喫煙場所が検討された。閉鎖型と開放型の2通り考えられるが、閉鎖型は各種制約により、実現可能性は極めて低いと結論付けられ、開放型での検討が進められた:
各候補地の問題点
5ヶ所候補が挙げられていたが、それぞれ問題点があったようだ。大部分が黒塗りとなっているのは、警察施設内部の具体的な配置が分かる部分(公になっている部分を除く。)が公開しないことと決定されたためだ。そのため詳細は分からない:
他施設から丸見えとなるのを懸念?
どうやら本部庁舎に隣接するがんセンター(北西)と重粒子線センター(北)の建物から喫煙場所が丸見えになってしまうことを懸念したようだ。本庁舎とこれら施設との位置関係を示す図、ほぼ黒塗りのページ、またがんセンターから府庁の喫煙施設を撮影した写真が参考に挙げられていた:
業者見積
府庁の喫煙設備を参考に、設置費用の見積が示されたのが次のページだ:
- 5平方メートル: 116万円
- 10平方メートル: 182万円
- 50平方メートル: 577万円
とても高額だ。
大阪府受動喫煙防止対策懇話会の開催について
本部衛生委員会が開催されるちょうどそのころ大阪府受動喫煙防止対策懇話会が発足し、第1回の会合が9月14日に開催されていた:
www.pref.osaka.lg.jp
条例検討にあたりポイントとなる事項の1つとして屋外喫煙場所の設置可否が挙げられていた:
本部本庁舎喫煙時間及び喫煙場所の制限(健管案)
改正健康増進法が施行される翌年の夏(この時点で施行時期は未定であった)に向けて喫煙時間と場所を制限する案を健康管理センターは提案した。禁煙タイムの設定の他、庁舎内の喫煙場所を2019年4月以降は各階1ヶ所に制限する、というものだ。また庁舎外の喫煙場所は内定した候補があったようにも見える:
健康増進法の改正を契機とした受動喫煙対策の推進について
2018年10月3日に警察庁長官官房給与厚生課長より改正健康増進法への対応方針について通知があった:
- 庁舎内喫煙室がある場合には、平成30年度内に廃止する。
- 屋外喫煙場所を設置する場合には、原則として壁・屋根・空気清浄機の3点を設置する。
健康管理センターの作成したスケジュール案では4月以降夏の改正法施行まで屋内喫煙所を各階1ヶ所使用する予定であったが、見直しを迫られることとなった。また業者見積は壁だけで屋根のないものについてであったが、こちらも再検討を要することとなった。
大阪府警察における受動喫煙対策について(案)
年が変わった2月4日に警務部作成の大阪府警察における受動喫煙対策について(案)が幹事会、運営審議会にかけられ、2月6日に公安委員会にて報告された:
- 2019年4月1日から府警が管理する庁舎は敷地内禁煙
だ。屋外喫煙場所を検討していたのが一転、敷地内禁煙を実施するというものに変わった。この間何があったかは推し量る他ないが、警察庁の通知に反するわけにはいかないので4月1日から屋内禁煙とせざるを得ないこと、また前述の大阪府受動喫煙防止対策懇話会が2018年12月11日に最終回(第5回)を迎え、その意見まとめを受けた大阪府健康医療部が「望まない受動喫煙防止に向けた基本的考え方」を提示しパブリックコメントを2019年1月10日に開始、その中で行政機関は2020年4月より敷地内禁煙が努力義務となることが1つ判断に影響を及ぼしたのではないかと考えられる。
パブリックコメントを経て、条例は2019年3月20日に公布された。条例概要に第一種施設(敷地内禁煙)における取り組みとして「※ 特定屋外喫煙場所を設置しないこと」と注記がある:
紆余曲折を経て、敷地内禁煙が実施されたわけだが、改正健康増進法に例外規定がなければ屋外喫煙場所を検討する余地もなかったはずだ。この骨抜きはJTやタバコ議連等の抵抗によりなされたものだが、行政機関にタバコ産業が付け入る隙を与えてしまったことになる。健康管理センターにしても致命的有害性を持つタバコ製品を製造・販売する会社とは接触を図るべきでない。